58時限目【後輩が出来たの〜】

 

 ◆◆◆◆◆

 春休みが終わり気候も暖かくなって過ごしやすくなった。そんな中、久々に登校した天使達。

 フォルネウスは誰1人欠けることなく集まってくれたことに安心した。そして朝のホームルームを始めたのだが!?

 ◆◆◆◆◆


 

「ロリエル」

「はい」


「よし、全員いるな。今日からお前達も2年生だ。後輩達のお手本になるように天使として——」

 ————「春休みの特番見たかー?」


 俺の声を遮るようにカマエルがカットインする。その声に反応したマールも嬉々として真っ赤なリボンをピョコらせる。


「見たっす見たっす! デビレンジャーvs魔面ライダーケバブ!」ぴょこん!


「あのコラボが実現するなんて、泣いたね、3回は軽く泣いたよ!!」


 駄目だ、ロリエルまで……


 相変わらず全く人の話を聞かねーな。


 ガブリ!「ぬぎゅぁーっ!?」ぴゅーっ!(血)


 噛みやがった! ガブリエル2世が!!

 春休みの間、あまり噛めなかったのを取り戻すかのように、フワフワとびながら追いかけてくる。だから飛ぶなって言ってるのに!?


「ちょ、待て!? 朝から複数回は反則だぜ!」


 2年生になっても中身はそう簡単には変わらないようだ。とはいえ1年前に比べたら皆んな少しばかり成長して背もほんの少し伸びたようだ。


 歳も14歳に向かっていくこの1年、彼女達はどんな成長を見せるのやら。先が思いやられるわ。


 そんな思考を巡らせる俺もまた春休み中に誕生日を迎えていた。歳は25になる。因みにサハクィエル先生は4つ歳上だ。今日も朝から癒されたぜ。



 ☆☆☆☆☆

 


 数日後、


 天使部の部室は相変わらず俺の部屋。

 そして本日は部屋で女子会が開かれている。ロリエルのカフェよりは出費がマシだが、俺の自由時間は皆無だな。顧問だし、仕方ないが。

 そもそも、顧問って何もしてないよね。


 そんな俺の存在はスルーで、マールとロリエルはデビレン話に花を咲かせる。

 ガブリエル2世とクロエル、モコエルの3人は勝手に冷蔵庫から出したジュースなんか飲んでいる。しかもそのジュースは先日俺が買わされたものである。常備しておけとのこと。


 いつの間にか壁に予定表やらを色々と貼られ、部屋の隅にはロッカーまで設置された。

 どんどん俺の居場所がなくなってきているように見えるその部屋の玄関のドアを叩く音がした。


 久々の依頼だろうか?


 どうぞー、とマールが言うとドアを開け1人の少女が中に入って来た。

 まだ少し大きい真っさらな制服に身を包む黒髪ショートで色白の女の子はその絵に描いたようなまつ毛が特徴的な黒い瞳で天使部の5人に視線を送る。


 瞬きする度に風が吹きそうなまつ毛を有する少女は、その少し癖のある短い髪の先を指でいじりながら何かを言いたそうにしている。

 そんな彼女にモコエルが声をかける。


「どうしたのかな〜? 見たところ、1年生のようだけど〜。あ、依頼なら気にせずに何でも言ってね〜?」


 モコエルの優しい口調に安心したような表情を浮かべた少女は口を開いた。


「ア、少し待って下さい先輩……ビビ、……よし繋がった。……お待たせしました、今、宇宙の司令部と通信してまして」


 5人の先輩○○エル達はキョトンと首を傾げる。

 まぁ、普通の反応だな。


「ア、そうだ。先輩、自分は依頼に来たんじゃありませんよ? 入部希望で」


 黒髪のまつ毛少女が言う。

 一瞬静まり返る部屋。少しの間をおいてフリーズしていたマールがふと我に返って言った。


「えっ? 新入部員っすか!」ぴょこぴょこ!


「ええ、まぁ……ア、駄目ですか?」


「そんなことないっす! 大歓迎っすよ! ね、皆んな!」


 マールが天使部のメンバーに言うと皆も笑顔で頷いた。どうやら受け入れ態勢は抜群のようで。

 その反応に安心した顔を見せたまつ毛ちゃんはペコリと頭を下げて口を開く。


「それなら自己紹介をさせていただきますね先輩。……ビビ、あ、今通信が……暫しお待ちを」


 通信ってなんだ?

 アレか? 所謂、電波系? 謎過ぎるぞ。


「あ、はい。……それでは改めて先輩方、自分は1年3組のマナエルといいます。

 宜しくお願いします」


 その何とも言えない棒読みチックな口調で丁寧に自己紹介をした少女、マナエル。


 ロリエルは奥からジュースを運んでくる。


「あ、ありがとうございます。いただきます」


 マナエルは喉が乾いてたのかそれを一気に飲み干した。


「私はロリエルよ。この部、あまりすることないけど宜しくね」

「はい、ロリエル先輩、宜しくお願いします」


「マナちゃん宜しくね〜、私、モコエルだよ〜?」

「もこもこ、モコエル先輩、こちらこそ宜しくお願いします。可愛いです、もこもこ」


「わ、わわ私はっクロエルっ……っていうんですがっ!?」プルプルプルプル

「クロエル先輩ですね。……その綺麗なストレート、羨ましいです。それと、その秒間で数千の振動を発生させる超振動、凄いです」


 クロエルの超振動に気付いた?


「マールエルっす! 皆んなマールって呼んでるからマナちゃんもマールって呼んでくれたらいいっすよ? 一応この部の部長を務めているっす!」

「マール先輩ですね。去年の体育祭、最後のリレー見てましたよ? 格好良かったです。憧れの先輩です。リボン可愛いです」

 マナエルは頬を赤らめながらマールを見つめる。


 そこで満を辞してガブリエルの登場。ガブリエル2世は跳ねても揺れない平らな胸をピンと張り、両手を腰に当て、この上ないドヤ顔で言った。


「ガブリエル2世なの〜! 先輩の言うことはちゃんと聞くの〜! えっへん、なの!」

「……えっと……このマスコットは?」


 マナエルは真顔で言った。


「マ、マスコットじゃないの〜先輩なのー!」プンプン!


「さぁおいでマスコットちゃん。その可愛い頬っぺを愛でてあげよう」


「やーめーろーなーのー!?」


 ガブリエルを何と認識したのか良く分からないが完全に先輩と思われていないみたいだ。

 ガブリエル2世はフワフワと逃げ回るが敢えなく捕まって後輩に愛でられしまうのであった。いつも思うが、ガブリエル2世ってヤラレ役だよな意外と。


 それを見たクロエルは便乗してガブリエル頬っぺを堪能する。いつもの光景だ。ただ1人、後輩ちゃんが増えただけだな。

 今更1人増えたところで、俺の鋼のメンタルは動じないは。


 と、少し変わった感じの後輩を迎え入れた天使部はこれで6人となった。


「やーめーろーなーのー!? ガブはせんぱいなの〜っ! ペットじゃないの〜! せんぱいは偉いの〜! プニプニするななのーー」


 このあと、数分間にわたりガブリエル2世の悲痛の叫びが響き渡るのであった。



 ◆◆◆◆◆

 突如現れた後輩天使マナエル!

 この後輩の存在が物語にどう関係してくるのか!?

 そしてガブリエル2世は先輩としての威厳を示せるのだろうか?

 要注目天使の登場の瞬間だった!

 ◆◆◆◆◆

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