57時限目【もうすぐ先輩なの〜】
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冬休みも散々振り回され、時は流れ3学期も半ばに差し掛かった。
ロリエルの覚醒も今のところ抑えられている。
覚醒の抑制はラジエルが祭りの夜に施した術式によって成されていて順調にその効果を発揮しているのだ。このまま上手く制御出来れば、ロリエルを覚醒させずに済むが、さてはて、事はそう簡単に運ぶのだろうか?
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3学期、本日も安定してメタトロン先生の治療を受ける俺は、ずっと気になっていたことを話した。
「そういえば俺が天界に来た時、律儀にもこの
天界パスを手に取り、幼女トロンちゃんに見せてみた。
「恐らくはそうだの。
逆にそれがなければお前は一瞬で悪魔だとバレてしまうからの。ルシフェルは優秀な天翔だ、そのパスに強力な防護結界の効果が付与されておるようだの。大天使ですら簡単には見破れんようになっておる。……しかし本当に強力な結界だの」
メタトロン先生はパスを手に取りまじまじと眺める。俺は更に問いかける。
「あ、それと後もうひとつ。それが記していた住所がここになってたんですよ。それで何とか学校に辿り着いたのはいいんですけど、間違われて担任になるっていう、普通はあり得ない展開で今俺は教師をやってるんですが……さすがにおかしくないですかね? だって、間違えたとしても本来ここに来るはずの教師が姿を見せないなんて」
「うむ、ふむふむ……いや〜大したもんだの……それもルシフェルの仕業のようだの。ここに来る筈の何者かなんてそもそもいないようだ。この学校自体に術式が施されておってそのパスを持ったお前がここに足を踏み入れることで全体に暗示がかかる。
それでお前は難無くここの先生として存在出来る訳だ。……あと、パスに私達しか知らぬ筈の暗号が刻まれておる。それを今解読したのだが……」
「ど、どうしたんですか?」
「よ、読むぞ。
そこに悪魔の教師がやってくる。俺の勝手で彼を巻き込んでしまった。悪魔の彼がいつまでも天界でバレずにはいれないだろう。だが俺はメタトロン、君なら気付いてやれると信じて彼をそちらに送り込む。術式の効果は1年。それまでに君が彼に気付いてくれることを心から願う。……そう記されておる……」
保健室の幼女はパスの術式を更新してくれた。1年って、結構ギリギリじゃない?
メタトロン先生は少し哀しそうな表情で俯き、そのパスを俺に返した。そして小さな声で呟いた。
「……気付かんかったらどうする気だったのだ……あのバカ……」
メタトロン先生はスッと立ち上がり俺をその大きな翡翠色の瞳で見つめる。そしてそのパスを絶対に手放してはいけないぞと念を押した。
☆☆☆☆☆
そして時は過ぎ、遂に1年間全ての行事を消化、そのまま春休みに突入した。
俺は平和な職員室であくびをしていた。
すると隣の席のサハクィエル先生はクスっと笑いヨダレが出てますよと笑う。
その笑顔に癒される。
「1年間、お疲れ様でした、フォルネウス先生」
「何とかやり切ったと言った所ですよ……色々ありましたからね。ガラスも何枚やられた事か。でもこれであの子達とは一旦お別れですね。次はどんなクラスになるのやら」
デスクに置いてあったコーヒーを手に取る。
「あれ? 何を言ってるんですか? うちの学校、1年から3年の卒業までずっと同じ先生が担任をするんですよ? 私は4年目ですから2周目なんです」
「……え、つまりそれは……」
「はい! フォルネウス先生も一緒に2年生になるって事ですっ! ふふっ良かったですね」
眩しい笑顔が俺を襲う。
「そ、そうなんですか」
つまり俺は3年間通して噛まれ続けるということかぁ!? まぁしかし、それならロリエルやマールを近くで見てやれるから安心っちゃ安心か。
「ふふっ、口元が緩んでますよ? そうです、今日久しぶりにうちに夕飯を食べに来ませんか? 昨日とても美味しそうな天海魚を買ったんです!
がっつり煮付けておいたので今日は味がしゅんでてきっと美味しいですよ?」
「ま、まぢっすか! 是非ともっ!」
◆◆◆◆◆
こうして、新任悪魔教師と教え子の○○エル達の1年が終わった。
2年目の春、何も起きずに平和に日々が続くといいのだがと、心の中で思うフォルネウスであった。
これにて、一章は完全に完結!
次回からは新たな展開が? 天界と魔界の間に何が起きているのか? そして遂に四大天使達にも動きが? 堕天しフォルネウスと入れ替わった天翔ルシフェルはどうなるのか!?
ここからは目が離せないぞ!!
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