49時限目【low Leeds café天女支店】

 


「えー、皆んなの意見を統計したところ最有力候補が○○喫茶なんだが、何か意見があれば今のうちに言っておいてくれよ?」


 俺は統計の結果を天使達に伝える。


「先生、○○とは?」


 アルミサエルが質問を投げかける。最もだな。


「そこは普通に喫茶をするより何か工夫があった方が面白いだろ?」


「く、工夫と言われても、お、おお、思い付かないのですが……?」プルプル


「あ、あのっ、例えば、コスプレしたりとかは? 可愛いお洋服、来てみたいなとか」オロオロ


 シャムシエルって、控えめだけど割と積極的だよな。ま、いいことだけど。すると予想通り、奴が反応した。エロ天使サキエルだ。


「おぉファンタスティックシャムちゃん! それはいい考えだよ〜、ぐふふ、ぐぬふふ、スカートの丈とか超短くしたりして……ハァハァ」


 サキエルはモコエルを目で犯すように見ている。当然、モコエルのテンションが一気に下がる。

 シャムシエルの意見を聞いた○○エル達は悪くないんじゃないかなと声が上がり始める。


「コスプレはいいっすけど、いったい何を着るっすか?」ぴょこぴょこ


「メイドさんエル?」パチクリ

「メイドさんエル!」パチクリ


「ふむふむ、メイド喫茶っすか! 面白そうっすね!」


「メイド服ならガブの屋敷で作らせるの〜! 予備もいっぱいあるの!」ドヤァ!


 便利なキャラ……おほん、奴だな。


「それならデザインとかもちゃんと考えないとね。私もネットで検索してみるよ」


 マトリエルが言うとサキエルが口を開く。天界ネットは確かに何でも検索出来るしな。その辺りはマトリエルに任せて問題ないだろう。


「へいへい〜、デザインなら私も一緒に考えるぜ〜? ファンタスティックでエキサイティングな衣装にしないと! ぐふふへへ〜」


 いやサキエル、久々の出番で全部持っていくつもりか? キャラ濃過ぎだからな!? 天使というかほぼ変態だからな?


「デザイン画なら任せるエル?」パチクリ

「任せるエル!」パチクリ


 どうやら衣装のデザインはマトリエル、サキエル、そして双子のラミエルレミエルに一任されそうだ。少しばかり不安だが。


「あらら、それなら衣装を作る側とカフェのお料理を考える側に分かれるのかな?」


 アラエルが言った。


「そうっすね! 衣装のことはマトリエルちゃん達に任せて、あとはカフェのメニューを考案するっす!」


「それなら今から皆んなでロリエルの家に行くの〜! そこでカフェのメニューを考えるの〜! いい考えなの、褒めていいの〜!」


「えっ? うちでっ!?」


 ロリエルは一気に集まる視線に戸惑いながら周囲を見渡した。そしてふぅ、と一息ついて言った。


「わ、分かったわ。うちの厨房を使っていいよ」


 教室からは喜びの声が上がる。そんな中、俺に声をかける天使がいた。ゼルエルだ。


「それなら味見役が必要ね? ふふっ先生、お願い出来るかしら?」


 ……え? 毒味の間違いじゃぁない?


「ナイスアイデアっす、ゼルエルちゃん!」


「それなら今日は放課後全員でロリエルのカフェに行くの〜! フォルネウスも一緒に来るの、拒否権はないの〜!」


 ☆☆☆☆☆


 こうしてメイド喫茶をする事になった1年1組のメンバーは揃ってロリエルの家、low Leeds caféへとやって来た。


 これだけの人数がこの店に入ってくるのはロリエルの兄がいた時以来らしい。

 天使達は厨房でメニューを考えて試行錯誤を繰り返す。しっかり拉致された俺はカウンターに座らされ次々と運ばれてくる試作品の味見を強いられていた。


 うぶ……これでかれこれ何個目だ? 流石に気分が悪く……


 テーブル席ではマトリエル達がデザインを考案中だ。


「ムフ……さ、採寸は私に任せてもらうよ?」


 明らかにオッサンのサキエル。いつもに増してやる気なのは、ただ、ヤル気なだけだよな。


「こんな感じのは? これをラミエルちゃん達に少しアレンジしてもらって……」


 パソコンの画面にはメイド服が映し出されている。悪くないな。


「悪くないエル?」パチクリ

「悪くないエル!」パチクリ


 金色の大きな瞳がいつもに増してパチクリしている。皆で協力か、いい光景だ。


「デザイン画は2人に任せるよ? 後はそれをガブリエルちゃんのところで加工といった流れね」


 マトリエルの眼鏡がキラリと光る。

 カウンター席では引き続き送り込まれる試作品をガブリエル2世に喰わされる俺。

 既に数ヶ所噛まれている。


 ○○エル達は休憩にロリエル特製のオリジナルパフェを堪能し、夜も遅いので解散することに。


 各々帰宅していく○○エル達、俺もやれやれと席を立とうとするとカウンター席に1枚の紙切れが。




 領収書?




 当分夕飯はインスタントラーメンになりそうである。助けて、サハクィエル先生……


 ◆◆◆◆◆

 何はともあれ、文化祭はもうすぐ!

 皆で協力してカフェを大成功させるのだ、○○エル達よ! お金は気にしなくていいのだから!

「いや、気にし——」

 次回! ガブリエル邸に潜入!?

 ◆◆◆◆◆







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