47時限目【続・悪魔と天使のデート】
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悪魔フォルネウス、そして正天使サハクィエルの2人が、暗くなり始めた空を見上げ歩いていると目の前にこれまた巨大な塔が現れる!
恋人たちの聖地、ルミナタワーである!
2人は入場ゲートのバイトちゃんにチケットを提示しその光り輝く白きタワーの中へ足を踏み入れた!
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「わぁ! やっぱり凄いですね!」
「あ、はい、そうですね!」
そうか。サハクィエル先生は俺がここに来るのが初めてとは思っていないんだな。中には子供連れや女同士のグループも見えるが、カップルが1番目立つときた。周りから見れば、俺達もそう見えてるのか?
「あっ! 見て下さいっ! とても綺麗ですよ」
サハクィエル先生はお土産コーナーのパワーストーンを見て目を輝かせている。様々な形や色をした宝石顔負けの石がズラリと並べられていて確かに綺麗だ。
手に取り見ていると、綺麗な制服を着たお店のオーナーさんらしき女性が声をかけてきた。
「お客様、何かお探しですか?」
オーナーはとても柔らかい口調で言って微笑む。
「えっ? あ、あのっ」
サハクィエル先生は戸惑いながら口ごもってしまった。
「この石は?」
俺は琥珀色のパワーストーンを手に取りオーナーに問いかけた。
「琥珀色のパワーストーンは『永遠』を意味します。そちらはとても綺麗な形をしていますので少し加工すればネックレスにも出来ますよ?」
「永遠、か。店員さん、これ、良かったらいただけますか? そうだな……その、ネックレスにしてもらえますか?」
角の丸い三角形のパワーストーンをオーナーに手渡す。
「えっ!? フォルネウス先生っ?」
サハクィエル先生は驚き目を丸くしている。俺は適当に誤魔化した。
「えっと、ほら、あの石の色、サハクィエル先生の琥珀色の瞳と似ていて、なんだか似合いそうだなと思って……迷惑、でしたか?」
「そ、そんな事ありませんっ! とても、とても嬉しいですっ! ありがとうございますっ!」
サハクィエル先生は今日一番の最高の笑顔を見せてくれた。俺は女性の扱いなんてよくわからないし、こうして何か買ってあげるくらいしか出来ないが、喜んでもらえたなら良かった。
暫くすると、加工を終えたオーナーが琥珀色のパワーストーンをあしらったネックレスを持ってきた。
「お客様、つけて行かれますか?」
「あっ、は、はいっ!」キラキラ
オーナーはサハクィエル先生にネックレスをかけてあげた。ケースの入った小さな袋を最後に手渡しにっこり笑ってありがとうございましたー! と元気に見送ってくれた。
琥珀色の石がさりげなく胸元の華やかさを引き立てている。サハクィエルの横顔がとても嬉しそうで俺は少し安心した。
正直、母親以外の女性に何か買ってあげるなんて、経験してこなかった俺は、改めて自分が天使に恋をしているんだと認識した。
上階へ移動する転送装置を利用し俺達はタワーのレストランで食事をした。
普段はコンビニ弁当ばかりだが今宵は特別な1日だ。俺は奮発して夜景の見える席を予約していたのだ。勿論、サハクィエル先生は喜んでくれた。
食事を済ませた俺達は更に上の階へ登る。そして転送装置から出て、目の前の絶景に心を打たれた。
眼下一面に天界の夜景が広がっている。ここからだと学校も見えてしまうんじゃないかと思える程遠くまで見渡せる。
この展望台、実は魔界でも知る人ぞ知る有名な場所で魔界の女子達の憧れの地でもある。
確か学生時代にそんなこもを言って騒ぐサキュバスの生徒がいたなと昔を思い出した。
まさか、自分がそこに来ることになるとはな。
それにしても綺麗だ。魔界にいた時には感じたことのない感覚、
サハクィエル先生の瞳はとてもキラキラしている。そう、胸の琥珀色のパワーストーンなんかよりずっと綺麗だ。
「ずっと、ずっと今のままで、時間が止まってしまったらいいのに」
サハクィエル先生は俺の身体に寄りかかり頬を赤らめる。2人の距離が近くなる。
寄りかかる天使の髪の香りと触れる豊満な胸の柔らかな感触は俺の理性を吹き飛ばすことなど容易だろう。しかし、ここは紳士的に。
俺は何とか理性を保ちながら、サハクィエル先生の肩に、そっと手を当てた。
俺だって、ずっとこのままでいたいよ。
口には出せなかったが、本心だ。
どうかしちまったみたいだな、俺。
こうして1日デートを堪能した俺達は帰路につく。
転送装置を使い地元へと帰ってきた俺はサハクィエル先生を自宅まで送る。
「今日はほんとに付き合ってもらってありがとうございます」
「そんな、とんでもありませんっ! 私の方こそありがとうございます! これ、大事にします!」
サハクィエル先生はネックレスを大事に両手で包み込みその琥珀色の瞳で俺を見上げる。
夜だというのに、なんて眩しい笑顔だ。
「喜んでもらえて良かったですよ。あ、もう遅いので、名残惜しいですが」
「……あ……はいっ……ま、また、明日学校で会いましょう。忙しい日々が始まりますね! 次は文化祭が控えていますし」
「そういえばそうでしたね。2学期はかなりハードスケジュールですね。お互い頑張りましょう」
俺はそう言ってサハクィエル先生に背を向けた。
「あっ……!」
その呼び止めるような彼女の声で振り向いた悪魔の唇を、
——天使の唇が塞いだ。
天使は言った。
「すみません」と。
俺はなんて馬鹿なんだ。
本当、情けない男だよ。目の前に、本当、目の前に彼女の伏し目がちな瞳が見える。
波打つその瞳に、俺は応えなければいけない。
琥珀色の瞳をしっかりと見つめ、心を決めた。
「俺は……正天使サハクィエルが、好きです。
い、今更言っても格好良くないと思いますが、俺と、その、
付き合っていただけませんか?」
街灯に照らされたエメラルドグリーンの髪が風になびく。その姿はそれはそれは綺麗だ。
「はい! 喜んでっ!」
頬を赤らめながら笑顔で言った天使の唇を、俺はもう一度、塞いだ。
また一つ、かけがえのないものが増えた。
◆◆◆◆◆
悪魔と天使が恋に落ちた!
それが、許されない恋と分かっていても、フォルネウスにその気持ちを抑える事なんて出来ない。
サハクィエルも同じだ。
恋には、悪魔も天使もない! フォルネウスよ、彼女を大事にするのだぞ!
次回からは〜、ドタバタ学園生活に戻るぞ!
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