36時限目【祭の夜に】
「やっぱり帰って来ないっす…ちょっと見に行くっす!」
そう言ってマールとガブリエル2世はロリエルを捜す為その場を離れることにした。
残されたクロエルとモコエルは5人分のかき氷を持ち立ち尽くす。
「と、とりあえずここで待ってるしかないね〜、かき氷、溶ける前に食べようかぁ〜、はむっ、うん冷たいね〜」
「はむっ、はむっっ! ぬあぁ頭がっ」プルプル
——
マール達は公共のトイレに到着したがやはりロリエルの姿が見えない。
2人は他も当たってみることに。
その少し前のこと、
「フォルネウス先生? 頬っぺにソースが付いてますよ? ふふっ、ゆっくり食べてもたこ焼きさんは逃げませんよ?」
フォルネウスの頬についたソースを指でふき取りその指を咥え笑うサハクィエル。フォルネウスは頬を赤らめた。
「あ、それよりあれも食べませんか?」
フォルネウスは焼き鳥の屋台を指差して言った。
「もう、フォルネウス先生ったら食べてばっかりですね、面白い人! ふふふっ」
(あー、眩しい! でも、悪くないっ!)
そんな2人の姿は誰がどう見てもカップルにしか見えないだろう。そして2人は空に上がる花火を見上げる。花火の光に照らされているサハクィエルは本当に綺麗で、フォルネウスは空より彼女に釘づけになりつつあった。
ふと、サハクィエルが悪魔の視線に気付き頬を赤らめる。2人は照れながら笑う。
もう付き合ってしまえ。そう言いたくなるような2人は食べ終わった容器をゴミ箱に捨てようと立ち上がった。ゴミ箱の近くには公共のトイレがある。
(あれは? デビパープル? のお面?)
真っ白な浴衣を着たロリエルがトイレから出てきて見たことのない女性と2人で歩いて行くのを見かける。
「ロリエルの保護者、か?」
声をかけず見送ったフォルネウスは、サハクィエルと祭の続きを楽しむことにしたのだが、
暫くして、異変が起きる。
———————!!!!
「ゔぅっ!」
突然サハクィエルが頭を抱えて息を荒げる。
「ど、どうしました? 気分が悪くなりましたか?」
「はぁっ、はぁ……き、気付きませんでしたか? 凄い
良く見ると周囲の人達の殆どがサハクィエルと同じく頭を抱えている。しかし、フォルネウスにはルミナスを感じ取れない。
(どういう事だ? そんなに強大な
フォルネウスはサハクィエルにすぐに戻ると告げ、ロリエルの歩いて行った方へ走り去る。
「あっ、フォルネウス先生っ!?」
サハクィエルが困った表情で立ち尽くしているとそこに心配して様子を見に来たクロエル達が。
「あっサハクィエル先生〜? マールちゃん達を見ませんでしたか〜?」もぐもぐ
モコエルはまだかき氷を食べている。
「あらモコエルちゃん、見てないのだけど?」
「先生っ、フ、フォルネウス先生はっ?」プルプル
「えっ!? な、何でそれをっ!?」
サハクィエルは驚いて赤面する。
「サハクィエル先生とフォルネウス先生が〜、最近いい感じなのは〜、皆んな知ってますよ〜? どうやら夏休みの間にまた進展したみたいですね〜」
「そ、そそそうなんですかぁっ!? はうぅ……はっ! それより、フォルネウス先生が思いつめた顔で向こうに走って行ってしまったの。もしかしたら何か関係あるかも知れませんっ!」
サハクィエルは若干動揺しつつも2人に告げ、共にフォルネウスの後を追うのだった。
——
(見失ったか……? 何だこの胸騒ぎは……)
悪魔の勘が何かを訴えかけているのか。
少し走ると人気のない場所まで出た。しかしロリエルの姿はない。
「あっ! 先生なの! こんな所で何してるの〜?」
そこに現れたのはロリエル捜索中のマール達だった。
「お、おうちょうどいい所にっ! ロリエルは一緒じゃないのか?」
「え? 拙者達はお手洗いに行ったきり帰って来ないロリエルちゃんを捜してるところっすよ?」
マールは首を傾げた。
(やはりそうか……何かおかしい。確かにこっちの方に、とんでもない気配を感じるのだが。集中しろ……研ぎ澄ませ。俺には、見つけられる)
————!
「いた……あっちだ!」
フォルネウスは社会見学の時と同じように気配を辿りロリエルの居場所を特定する。
これはフォルネウスのユニークスキルだ。
この
暫く走ると、フォルネウスの気配探知の甲斐あってか、池の前で倒れるロリエルを発見する。
フォルネウスは駆け付けてロリエルの小さな身体を抱き上げる。声を荒げ名前を呼ぶと身体がピクッと反応して、白き天使はゆっくりと目を開いた。
「……あれ、せんせ……?」
目が合う。その瞬間、フォルネウスは目を見開いた。彼の見た彼女の瞳が……
その時だった。
共に来ていたマールが駆け付けた。
「良かったっす! こんな所で倒れちゃうなんて……体調でも悪かったんすか? 顔色が悪いっすよ……?」
「いいえ、そんな事は、うっ……」
頭痛がするのか頭を抱えて苦しそうにしている。
心配するマールの背中を、ガブリエル2世は黙って見ていた。その表情は、
「一緒にいた女は……駄目だ気配が完全に消えている……それにこの池、研ぎ澄ましてみるとやけに
フォルネウスが思考を巡らせる中、クロエルとモコエルを連れたサハクィエルが、その立派な双丘をこれでもかと揺らしながら駆け付けた。
肩で息をするサハクィエルは起き上がれないロリエルを優しく抱きしめて自らの
背中の羽は大きな白い翼に形を変え、光が身体を包み込む。ロリエルはその光に包まれ、再び眠るように気を失うのだった。
☆☆☆☆☆
一旦フォルネウスの部屋に戻りロリエルが目覚めるのを待ち、その後、皆を送り返したフォルネウスとサハクィエルは帰り道、夜道で話していた。
「ロリエルは何故あんな所に?」
「分かりませんが、
「人為的に……って……何の為に?」
「すみません、分かりません……」
「あ、サハクィエル先生が謝る事なんてないですよ! あ、ほら、着きましたよ」
サハクィエルの住むアパートまで辿り着く。
「あ、いつのまに! あの、今日はありがとうございます! と、とても楽しかったです。少し気になることもありますが、今は様子を見るしかありませんね。それではまた、学校で」
サハクィエルは最後に最高の笑顔を見せ帰っていった。彼女を見送りフォルネウスは1人学校の寮を目指す。
—————————違和感。
フォルネウスは振り返る。しかし、そこには誰もいない。視線が突き刺さるような違和感が、フォルネウスを襲ったのは、間違いない。
(この視線、あの時の……)
◆◆◆◆◆
何はともあれ明々後日には2学期が始まる。
再び保健室通いの日々が始まるのかとため息をついたフォルネウスだった!
◆◆◆◆◆
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