28時限目【妹乱舞っす】

 ◆◆◆◆◆

 さて、本日の天使部はいつもより騒がしい。

 何故なら、クロエルの妹達と共にプールへ行くことになったからである!

 今回は天使部部長、マールの視点で天使達の水浴びを追っていくとしよう。

 頑張れマール! 部長としてしっかり皆を引率するのだ!

 ◆◆◆◆◆




「ちょっと! お姉ちゃんの左手はクルエルがキープしてたんだからね!?」

「えっ……そんな……クリエルが先に握ったんだもん!」

「その前にクルエルがキープしてたの!」


 さ、さっそくケンカが始まってしまったっす。

 次女クルエル8歳はいつも強気なわがままっ子、三女のクリエル6歳は弱気な性格っぽいっすね。

 お姉ちゃんであるクロエちゃんの取り合いになってしまったみたい。


 そ、それはさておき、向こうも大変そうっすね。


「喰らえぇっ!」


 四女の4歳クラエルが、ロリエルちゃんとモコちゃんに突撃を繰り返し、五女の1歳クレエルは何故かガブリンに懐いたようでフワフワと飛びながら、頭の上に落ち着いたっす。


「な、なのっ!?」


 ガブリンはクレエルを降ろそうするけれど、断固として降りてくれそうにないっすね。


「なの〜仕方ないの〜。赤ちゃんだから許してあげるの〜」


 小さい子には嚙み付けないっすもんね。ガブリン頑張れっす! そっちは任せたっす!

 拙者はクロエちゃんを奪われた三女ちゃんの相手を。手、繋いでくれるかな?


「はい、クリエルちゃん? 拙者で良ければ手を繋ぐっすよ!」


 クリエルちゃんに手を差し伸べて笑顔を見せた。クリエルちゃんは頬を赤らめ、その手を握り返し嬉しそうに笑ってくれたっす! かわいい!


「ありがとうっ! マールお姉ちゃんっ!」


 お、おお、お姉ちゃんっ!!!!


「ど、どう致しましてっす! さ、皆んな行くっすよ?」


 なんだかテンション上がってキターっす!


 ロリエルちゃんとモコちゃんの体力が天民プールまでもつか少し心配だけれど、とりあえず出発するっすよ。


 天民プールは徒歩でいける距離にあるっす。


 天界では基本皆んな徒歩か公共の転送装置を使って移動するっす。

 因みに無闇に飛ぶ事は非常時以外は原則禁止されているっすよ。天使力ルミナスに関しても乱用は控えるというのは天界の常識っす。


「喰らえぇっ!」


 クラエルちゃんは姉妹の中でも一番のおてんば天使みたい。とにかく大人しくするのが苦手で更に攻撃的っすね。ロリエルちゃん、大丈夫かな?


「ちょっ、ちょっととりあえず着くまでまっすぐ歩こうよ? ね? あわわ!?」


「ふえ〜、本当に元気だね〜」


 ロリエルちゃんとモコちゃんにクラエルちゃんの突撃ダメージが蓄積されていくっす。これは一刻も早くプールに行かないと、保ちそうにないっすね。


「こ、こここらっ、クラエル? あまり困らせたらっ、言い付けちゃうんですがっ?」プルプル


 ☆☆☆☆☆


 こうして元気な妹達を連れ何とか天民プールへ到着した拙者達は、水着に着替え場内へ。


 そこは半分屋根がかかった室内プールのような作りで流れるプールもあるし、ウォータースライダーもばっちり完備されているっす。

 勿論小さい子供用のプールもあるっすよ!


 って、えぇーー!?


「行っくぞー! とうっ」


 クラエルちゃんは場内に出るや否や流れるプールへ姿を消してしまったっす!!

 真っ白な水着に身を包んだロリエルちゃんは慌ててクラエルちゃんを追って苦手な人混みを掻き分け、遂には流れて行ってしまったっす。


「はわっ、ちょっと待って〜!? あ〜れ〜?」


 それを何とも頼りない走りで追う黄色いヒラヒラ水着のモコちゃんも、共に流れて行ってしまったっす……大丈夫っすかね……


「い、行っちゃったっすね」


「な、なんかもうごめんなさいとしか言いようがないのですが……」プルプル


 黒い水着がしっくりくるクロエちゃんは申し訳なさそうにしている。


「それよりもマールはスクール水着なの〜? ガブに言ってくれたら用意したの〜っ」


 そう、拙者、スクール水着で出撃していたっす。

 名前も、マールエル、と書き込まれているっすよ!


「これが一番動きやすいっす! ガブリンに去年もらったのは小さくて着れなくなっちゃったっすよ!」


「お姉ちゃん、スライダーに行きたいっ!」


 次女クルエルはクロエルの手を引っ張る!


「あ、クリエルも行きたいのにっ……」


 それを見た赤と白の意外と可愛い水着のガブリンが、五女のクレエルは見ててあげるから行って来ていいの、と子供用プールに浸かる。


 クレエルちゃんはしっかりガブリンの頭に掴まっていて、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡してはキャッキャとはしゃいでいるっす。

 ここはガブリンに任せて大丈夫そうだ。


「ガブリン、ありがとうっす! 後でガブリンも一緒に行くっすよ!」


「うん、分かったの〜!」


 拙者とクロエちゃんは2人の妹を連れウォータースライダーの列に並ぶ。朝一だっていうのに、既に長蛇の列と化しているっす。


「ちょっとマールお姉ちゃんとはクルエルが手を繋ぐんだからね!」


 あ、あれ? こっちに来たっすよ!?


「……えっ!? だってさっきはお姉ちゃんと、手、繋ぐって言った……」プルプル


「それはさっき、今は今!」


「そ、そんな〜……しゅん……」


 クルエルちゃんが拙者の手を奪い取ってしまったっす。再びあぶれてしまったクリエルの手はクロエちゃんが握ってくれた。


 これは大変そうっすね……


 ◆◆◆◆◆

 頑張れ部長マール!

 この程度、まだまだ序の口だぞ!

 次回は、神の視点で全体を覗くとしよう!

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