27時限目【夏休み緊急会議】

 ◆◆◆◆◆

 遂に始まった平和な夏休み!

 しかーし! 朝起きるとそこには奴らがいた!

 時刻にして朝の8時、集結した天使部一行が、我が物顔でくつろいでいたのだった!

 ◆◆◆◆◆



「お、お前らっ!? 夏休みだってのに朝から何してるんだよっ! 勝手に上がり込んで、鍵は閉めていたはずっ……て、ぬおおっ!?

 窓がっ!! この前変えたばかりなんだぞ!? タダじゃないんですよー!? 分かってますかー、天使の皮を被った悪魔達よーっ!!!!」


「……ふぅ、少し静かにしてもらえない?」


 ロリエルの冷たい眼差しが突き刺さる。


「そうなの〜、五月蝿いの〜静かにしないと噛み付くの〜!」ガブリ!


 いや、もう噛んでるだろ!!



 とりあえず止血して(メタトロン直伝応急処置)何の用か聞くだけ聞いてみた。


 どうやらマール達は夏休みの計画を立てているようだ。それならロリエルのカフェでやれよと思ったが、そんなこと、気まぐれな天使達に言っても無駄とみて諦める。


 テーブルの上には白紙の紙が置かれている。


「皆んな一人ずつこの紙にやりたいことを書くっす! せっかくの夏休みだし思いっ切り遊ばないと勿体無いっすよ!」


 マールはペンを取り出した。頭のリボンも跳ねる。


「やりたいことなの? ガブはマールと一緒ならそれで良いの〜!」


「そ、そそそうねっ……な、夏だしっ、プ、プールに行きたいなっ……とか思ったりするのですがっ……!」プルプルプルプル!


 クロエルはそう言ってテーブルの上の紙に書き込み、皆んなにその日は妹達も連れて行きたいと告げる。クロエルに妹がいたのか。


「構わないっすよ? 皆んな、最初の予定はプールで決まりっすね、クロエちゃんとこの妹さん達と一緒っす!」


 マールは勿論、全員快諾して最初のイベントが決まった。プールか、お決まりだな。


「お祭りにも行きたいよね〜、皆んなで花火を見たり〜それからかき氷を食べたり〜きっと楽しいと思うなぁ〜、どうかなぁ?」


 モコエルちゃん、今日もニコニコで提案する。


 その提案も皆が快諾し夏休みの最期のイベントはお祭りに行くで決まったようだ。お祭りは夏休みのさいごの週にあるみたいだな。

 天界の祭か、ま、お決まりだな。


 ロリエルは天使部の皆んなで天使力ルミナスを高める為、パワースポットを巡るのはどうかと皆に提案する。勉強熱心でよろしい。


「おお! 良いっすね! 天使部っすからやっぱり天使力ルミナスも大事っすね! それなら少し遠いけどいい山があるっすよ!」


「た、確かに、天使部なのに天使学の実技は皆んな散々だったし……少し練習するのも悪くない、かもっ?」プルプル!!


 クロエル、今日も順調にプルってるな。


「それならガブはキャンプに必要なテントとかを用意しておくの〜! 前日に執事に運ばせておくから楽なの〜、えっへん褒めるの〜!」ドヤ!


 それは執事が褒められるわけで、お前がドヤる場面じゃぁないだろ。というか、やはり親が大天使なだけあるな、執事がいるとは。

 ま、俺の家にもメイドはいたが……

 アイツ、無駄に心配してそうだな。


 ロリエルはテーブルの上の紙に予定を書き込む。

 ガブリエル2世は特に無いようだし、後はマールだが、


「マールちゃんは〜何をしたいのかな〜?」


 モコエルが言うとマールは不敵な笑みを浮かべ口を開く。


「ズバリ、肝試しっす! キャンプの夜にはつきものっすよ! ちょうどそのパワースポットの山にいい感じの場所があるっす!」


「き、きき……肝試しっ!? そ、そんなな……おおおばけが出たら……た、大変なんですがっ?」プルプル!!!!


 これで大きなイベントは決まった。後は夏休みを満喫するだけである。天使達は用が済んだ途端、俺の部屋から飛び出して行ってしまった。



 パリィーーーン!



「だからちゃんと玄関から出て行けって言ってるだろーがー!!!!」


 飛び散った破片を数発浴びながら叫ぶが、彼女達は全く気にせず去って行ってしまった。


 平和な筈の朝だったのだが……

 破片を拾い集め溜息をつく。

 それにしても夏休みは教師も少し暇である。やることはそれなりにあるのはあるが。

 とりあえず保健室へ行くか。


 ☆☆☆☆☆


 保健室のドアを開けると、そこには幼女が。


「何だ朝から? フォルネウスか……よく噛まれるとは思っていたが夏休み初日の朝一から治療に来るとは流石に思っておらんかったぞ。まぁ良い、そこに座れ」


 朝メタトロン先生は、噛まれた俺の左手に薬を塗り込みいつもの包帯を巻く。

 や、やはり凄い、不思議と痛みが引いていくのだ。悔しいがこの幼女は間違いなく癒しの天使なのだろう。


「……失礼な奴だの。お前はいつも思っていることが顔に出ておるぞ?」


 メタトロン先生はちょこんと椅子に座り、俺の泳ぐ目をじっと見つめてくる。

 そして首を傾げながら言った。


「お前は、何故教師になろうと思ったのだ?」


 翡翠色の大きな瞳が俺を吸い込むように見つめてくる、不思議な感覚だ。


 何故って、そりゃ俺の悪魔学を叩き込む為に、とは、言えないよな。


「何故って、そりゃあれですよ。最近の天使はたるんでるから俺の天使学を叩き込む為にですよ」


 メタトロン先生は、ほぅ、とだけ言って背を向ける。今日も日替わりのシュシュが可愛いぜ。


「ほれほれ、私は忙しいのだから用が済んだらサッサと出て行かんか」



 俺は虫をはらうかのように保健室から追い出された。ロリトロンめ、もう少しそのクーラーの効いた部屋で休ませてくれよな。


 今日は特にやることがない。

 少し街を歩いてみよう。


 俺は自室へ戻り、この前買っておいた私服に着替え、街へ繰り出したのだった。


 ◆◆◆◆◆

 波乱の夏休みは始まったばかり!

 フォルネウスは天使達に邪魔されず、魔界に帰る手立てを見つけ出せるのか!?

 ◆◆◆◆◆


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