24時限目【ヒーローは遅れてやってくる?】
◆◆◆◆◆
慣れない街をあてもなく走るフォルネウス2世、しかし一向に迷子の天使は見つからない!
銀髪と白髪、この世界では目立つ2人が見つからないことに焦りを感じはじめるフォルネウス。
ヒーローは遅れてやってくる、フォルネウスよ、2人のヒーローになるのだ!
今回も神の視点から、物語を追うとしよう!
◆◆◆◆◆
フォルネウスは走った。徐々に息遣いが荒くなり始める。
「くそ、こうなったら力を使うか……」
(いや、駄目だ悪魔だとバレてしまう。ならどうするんだ、くそっ)
「走るしかないだろ! 感じるんだ……二人の気配を……俺には、ソレが出来る!」
フォルネウスは目を閉じ精神統一をする。息を吸い込み、吐く。
「……いる」
☆☆☆☆☆
一方、迷子の2人は。
路地裏にて、2人は寄り添って座る。
一つのローブに
ガブリエルは相変わらず泣き止まない。
ロリエルはどうしたらよいか分からず、とりあえず鞄から持ってきたデビレンジャーグミを取り出し封を開けた。
「……はい」
「……うっ……な、なの?」
「……あげるわ」
「あ、ありがとう……なの……」グスン
「きっと大丈夫だから、先生が来てくれるのを待とう?」
「うん、はむ。お、美味しいの〜!」
ガブリエルは無理に笑顔を見せる。
「貴女は……ガブリエルちゃんは何故、そんなにマールちゃんに固執するの? あ、確かにマールちゃんは明るくて優しくていい子だと思うけれど。デビレンジャーも好きだし」
ロリエルは前々から気になっていたことをガブリエルに問う。すると、ガブリエル2世は顔を上げ、徐に語りはじめた。
「マールは……ひとりぼっちだから。ガブが一緒にいないと駄目なの」
「ひとり……ぼっち? そんなことはないでしょ? だって友達も沢山——」
「ん〜違うの、家族がいないの」
「え……?」
「マールは1人で生きてるの。パパもママも小さい時に居なくなっちゃって、幼稚園でもひとりぼっちだったの。だからガブはお友達になったの〜。そしたらマールは、本当は明るい子だってわかったの。
だから、言ったの。ガブのお家で一緒に暮らそうって。でも、それは迷惑になるからって。だからせめてガブは……ママにお願いして、1人でも生活出来るようにしてもらったの」
「マールちゃん……そうなんだ。いつもあんなに明るいから全然分からなかった」
「これは先生達も知らないことなの。多分、フォルネウスも知らないの。大天使の力で、干渉出来なくしているみたいなの」
「そ、そんなことが? 大天使様なら、それくらいは容易なのよね……でも何故?」
「大天使にも、色々あるの」
ロリエルはデビレンジャーグミを1つ口に放り込みオマケの封を開けてみた。
デビモスグリーン、だった。
ロリエルは心の中で心底落胆した。狙いは勿論、デビパープル一択だからだ。今日は本当についていない、そうロリエルがガッガリしているとガブリエル2世が鞄の中から何かを取り出した。
それはまさかのデビレンジャーチョコだ。
ガブリエルはマールに勧められて買ったの、と言って封を開け1つロリエルに差し出した。
「ありがとう」
ロリエルはデビレンジャーチョコを小さな口に入れた。口の中に溶けて広がる甘みが身体の疲れを癒してくれる、そんな気分になったのか、口元が緩む。
その間、ガブリエルはオマケの封を切る。
そこから出てきたのは、なんと!
デビパープルのレジェンドキラカード!
世界に5枚しかないレジェンドキラカードがガブリエル2世の手に。しかもデビパープル!
「これ、あげるの」あっさり
ガブリエルはデビパープルレジェンドキラカードをロリエルに差し出した。
「ええぇっ!? そ、そんな、い、いいのぉぉっ?」
そう言いながらも自然と手が伸びるロリエル。
ロリエルはデビパープルレジェンドキラカードを手に入れた!
「ガブはあまり見ないし興味無いからいいの。ロリエルは好きみたいだし、だからあげるの〜。えっと、その……い、意地悪してごめんなさいなの。ロリエルがマールと仲良くしてるの見て、ちょっとだけ妬いてたの……」
「そ、そんなことで? ま、まぁいいわ。でもマールちゃんはいつもガブリエルちゃんの話をしてるわ。デビレンジャー話の間もずっと気にしてるもの。正直、私の方がいつも思ってた。羨ましいなって……マールちゃんは私に手を差し伸べてくれた。ガブリエルちゃんがマールちゃんにしたように、マールちゃんは私を助けてくれた。ひとりぼっちだった私を、天使部の皆んなが受け入れてくれた。とても嬉しかったんだ……」
2人は顔を見合わせて、クスリと笑った。
「私、身長計で背伸びしてた……ふふっ」
「ガブもちょっとだけ飛んでた。ぷぷっ」
刹那、とてつもなく強大な気配を感じたロリエルは、ガブリエルの口をおさえる。
「しっ、誰か来る!」
「……なのっ!?」
路地裏に何者かの気配がする。
気配が徐々に近付いてくるのが分かる。2人は
しかし、その人物は2人の前で立ち止まり見えない筈の2人に視線を下ろした。
悟る。瞬時にして悟らされる。
目の前にいるのは、人間ではない、と。
女は短めの青い髪を風になびかせる。哀しげな赤い瞳が2人を見下ろした。
「
「え?」
遠くから男の叫ぶ声が聞こえてくる。聞き覚えのある、あの声だ。
「来たか……私が来るまでも無かったようだな。
青い髪の女は言葉を残し、空間に溶け込むように姿を消した。
ふとロリエルがガブリエルを見ると、ガブリエルの表情が明らかにいつもと違っていた。
「ガブリエル……ちゃん?」
「……えっ!? あ、な、何でもないの〜」
声が近付いてくる。
路地に入って来たフォルネウスは小さくなった2人を見つけ心底安心した表情を見せた。
その額には大粒の汗。
「はぁはぁ、やっと見つけた……お前ら、よく無事でいてくれたな……全く、ヒヤヒヤさせるよ……はぁ」
「す、すみません!」
「ご、ごめんなさいなの、ガブのせいなの」
「大体わかってるよ。ほら、帰るぞ? 帰ったら説教が待ってるから覚悟しろよ?」
——
こうして無事に保護されたガブリエル2世とロリエルはフォルネウスに連れられて天界へ帰還したのだった。
校庭で心配して待っていたマールはガブリエルとロリエルを見るなり、全力で飛びついた。
ガブリエル2世とロリエルの小さな身体を抱きしめて、思いっ切り泣いてしまったマールを2人は逆に抱きしめてあげたのだった。
もう、1人にしないから安心して。
そう心の中で言いながら。
何はともあれ波乱の社会見学も一件落着で終わり天使達も帰宅した。
そして日も落ち暗くなった頃、
保健室にフォルネウスとメタトロンがいた。
「お前……1日1回噛まれんと気がすまんのか?」
メタトロンは背伸びで包帯を巻く。
「まさか最後に噛まれるとは思いませんよ」ぴゅっ!
「ま、まぁ今日のアレは一種の愛情表現だろ。懐いておる証拠だの、全くモテる男は辛いってやつかの。ほれ、これで大丈夫だ」
メタトロンは少し息を切らし椅子に腰掛けた。
そしてその翡翠色の大きな瞳で、フォルネウスを見つめる。
「あ……の……何か?」
「いや、何でもない。さっさと出て行かんか! 私は早く帰って予約しているドラマを見たいのだ! しっしっ!」
虫を追い払うようにフォルネウスを追い出したメタトロンは部屋で1人、先程届いた封筒の封を切る。
……
「……難儀だの……全く」
◆◆◆◆◆
何はともあれ、2人を見つけたフォルネウス。
しかし、彼は知らない。
2人の前に現れた謎の女の存在と、メタトロンの呟きの意味を。
次回! 視点をフォルネウスに戻すぞ。
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