20時限目【続・○○エル達の社会見学】
俺は天使達を全員通したあと、人間界へ繋がる扉を潜った。
——
ここが人間界。
扉を通り抜けた先に広がっていたのは見慣れない街並みと……濁った空気。
なんだこの匂いは?
あの走る鉄の塊から出ている煙の所為か?
俺はひとまず天使達全員の有無を確認し、大まかな説明をした。
今回の社会見学、1年生は6組もあるということでクラスごとに別々の場所へと飛ばされている。
俺のクラス、1年1組は日本という国に訪れたのだ。俺は資料に目を通しながら訪問ルートを確認する。どれどれ、
にっぽん、トーキョー?
良く分からんがとりあえず書いてある通りに進んでみるか。
「よーし、皆んな班ごとに固まって移動してくれ。まずはこのトーキョーの街並みを見学する。そして昼からは各班で『天使の悪戯』を執行するからな」
「はぁーい!」
○○エル達は元気に返事をする。
しかし、天使の
天使の悪戯とは何か。やはりその説明は必要だろう。先にも言った通り天使は人間界への影響が大きい存在だ。神を除き、天使のみが人間界への干渉を許されている。因みに
それはさておき、天使の悪戯。
それはどういった物かと簡単に説明すると、人間界でたまに起きる奇跡を演出することだ。
天使の仕事は基本的に人を幸せにすること。
私生活の中で時折人間界へ赴き、ちょっとした奇跡を起こすことが正天使に課せられた使命なのだ。
そこで注意しなくてはいけないのは、やり過ぎないこと。適度に幸せを与えるということが大事なのだ。あのサハクィエル先生も年に3、4回は人間界へ訪れていると言っていた。
とりあえず、コイツらをまとめながらトーキョーとやらを見学するか。
☆☆☆☆☆
こうしてトーキョーの各地を回った俺達は、豆芝公園という公園で昼食をとることにした。
天使達は各班で固まりそれぞれの弁当を見せ合っている。どれどれ、皆の親睦がうまく深まりそうか見に行こうかな。まずは、1班。
「わぁ〜シャムシャムのお弁当凄いっすね! 何というか……おっ○いっすね、コレはっ」
「えっ……そ、そう? お、お母さんが作ってくれたんだぁ。ふふっ、食べるのが勿体ないよ〜」
シャムシエルは頬を赤らめとても嬉しそうにしている。そしておっ○いを手に取った。
何という弁当だ。よくコレを作ったな、シャムシャム母よ! シャムシエルはそのおっ○いにかぶりついて小さな身体を震わせる。
「うん、美味しい、このオニギリ! はむっ」
「マトリエルのお弁当はシンプルエル!」パチクリ
双子天使レミエルがマトリエルのケロリーメイトを見てパチクリしている。
「私は食べることに興味ないからね〜。はぁパソコン持って来れないのが苦痛で仕方ないよ。早く帰って検索したい」
マトリエルからすると人間界よりも検索らしい。
クセのある深緑の髪をクルクルと指でねじったりして退屈そうにしている。
2班のメンバーは木の影に座りながら弁当を食べているようだ。
「クロエルちゃん、少食だないつも。もっと食べないと大きくなれないよ?」
クロエルの小さな弁当箱を見たアルミサエルはそう言って自身の弁当のおかずをクロエルに分けてあげた。今日も綺麗な黒髪のポニーテールがこれでもかと決まっている姉御肌のアルミサエル、やはり優しいな。
「あっ、ありがと、ございまっす、ですがっ私、あまり食べられないのですがっ!?」プルプルプル
「あらぁこんなに震えちゃって、可愛い。何なら私があ〜んってしてあげましょうかぁ?」
ゼルエルは震えるクロエルを見て舌舐めずりをする。無駄にエロいな、おい。
「あわっ、そ、そそそんなっ!? ひ、ひとり、で食べられますっから?」プルプルプル!!
クロエルが超振動を起こしている……1秒間に3000回レベルの、超、振動だ。
俺にはわかる。見えるのだ。
それはさておき、
少し歩くと、こちらの3班でも1人の少女が襲われていた。
「モコちゅぁ〜ん、迷い込んだ異世界で2人きり、さぁ、怖がらないで! 共に、ファンタスティック! エンジェラーッハァ!!」
エキサイトした赤髪の天使サキエルはモコエルに絡みつく。なんだ、エンジェラーッハァって。
「やっ……ちょっと何で興奮しちゃってるんですかぁ〜! きゃっ! そ、そんなところ……っ……ア、アラエルさぁーーん何とかして下さぁ〜い!」
涙目で助けを求めるモコエルに、あらら〜、とだけ言ってニコニコしているアラエル。
アラエルの、ただニコニコしているだけ感はハンパねぇなほんと。すまぬモコエル、これは俺のミスだ。今回はヤられてくれ!
で、4班は、お、いた。
「ふぅ〜食った食ったぁ!」
弁当を完食したカマエルは食後の運動とばかりに走り回る。双子の姉だっけ、ラミエルは持ってきたオヤツを食べながら大きな金色の瞳をパチクリさせながらそれを見ている。
ロリエルはこっそりと持ってきたデビレンジャーグミを鞄から取り出そうとしているな。俺にはバレているぞ。するとガブリエル2世が、
「オヤツなんか食べたら太るの〜! あ、ロリエルはもしかして食べるの〜? 太るの太るの〜!」
「な、何よ。た、食べる訳ないでしょ? 遠足じゃないんだから」
ロリエルは鞄にデビレンジャーグミをサッとしまう。いや、食べていいんだぜ、ロリエル?
すると、あろうことかガブリエル2世は自分の鞄からオヤツを取り出し食べだしたではないか!
「はっ!!」プルプル!(秒間5000突破)
ガブリエル2世は根に持つとかなりしつこいようだな。なんて酷い仕打ちなんだ。これはあとでお仕置きかな、ロリエルがかわいそ過ぎるわ。
——
昼食を済ませたクラスの天使達が一箇所に集まってきた。
「よし、今から実践だ。各班、この公園の人間に奇跡をもたらして再びこの広場に戻ってくること。絶対に公園から出るんじゃないぞ? それと、どんな奇跡を起こしたかちゃんと報告文をまとめること。あと、くれぐれもやり過ぎないこと。
それじゃ、始めていいぞ〜」
○○エル達は、はぁーいと返事をし、各班で散っていった。返事だけはいいんだからよ。
「皆んなっ、素敵な奇跡を演出するっす! レッツゴーっす!」
赤いリボンをぴょこぴょこさせながらマールは走っていく。
いったいこのおてんば天使達はどんなプチ奇跡を演出するのだろうか。少しばかり心配である。
◆◆◆◆◆
遂に始まる、天使の悪戯。
見習い天使達のプチ奇跡とは、
そして、ガブリエルとロリエルの不仲は解消されるのか!?
次回、
◆◆◆◆◆
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