19時限目【○○エル達の社会見学】

 ◆◆◆◆◆

 身体測定から更に数週間が経過。

 フォルネウスも半ば色々諦めて、教師に専念する中、1学期の特大イベント、

 社会見学が迫りつつあった!!

 ◆◆◆◆◆





「明日は社会見学だ。ちゃんと支度してくる事。じゃ、気をつけて帰れよ。解散。あ、それと、廊下は飛ぶなよ〜」


 社会見学。

 天の川中等女子学院の1年の1学期の終わりには毎年恒例の社会見学が実施される。らしい。

 その内容だが、驚いた事に人間界の見学だそうだ。魔界では聞いたこともない。


 だが、確かに天使は人間界に凡ゆる影響を与えている。魔界よりは人間界とのパイプが太いようだ。


 例えば大天使ガブリエル。

 聖母マ○アにあのイエス・キ○ストの受胎を告げたことは魔界でも有名な話だ。


 まぁ、その大天使の娘はちょっとアレだが。


 でもコイツらもいつか卒業して、もしかしたら大天使になって、人間界に降り立つ時が来るのかも知れない。それを考慮してこの行事があるのだとサハクィエル先生が昨日教えてくれたっけ。


 天界にも学校は山程あるが、人間界の見学をする学校は数少ない名門校だけらしい。



 え、名門校? ここ、名門校なの?


 それはそうと人間界か。



 ☆☆☆☆☆


 そして翌日、社会見学当日。


 教室の生徒達はどんなオヤツを持ってきたかという話題で持ち切りのようだ。

 というか社会見学だよな? コイツら遠足か何かと勘違いしてないか?

 俺は教室の天使達が全員揃っているか確認したあと、それぞれの班分けを発表した。


 1班、

 班長マール、シャムシエル、マトリエル、レミエルの4人。


 2班、

 班長アルミサエル、クロエル、ゼルエルの3人。


 3班、

 班長アラエル、モコエル、サキエルの3人。


 4班、

 班長カマエル、ガブリエル2世、ロリエル、ラミエルの4人。


「各班、準備が済んだら校庭へ出ろよー?」


「ちょっとフォルネウス〜、何でガブとマールが違う班なの〜っ! 班を組み直せなの〜っ!」プンプンッ


「今回の社会見学は人間界に触れるというのが目的だが、それ以外に普段仲の良い奴とは敢えて別の班になってもらって他のクラスメイトとも、親睦を深めるってことも踏まえているのだよ」


 俺がこんこんと言ってやるとガブリエル2世と同じ班のロリエルが口を挟んできた。


「私とガブリエルは普段から天使部で一緒なのに何故同じ班なんですか?」


「そりゃぁ、お前ら、仲悪いし。今回の社会見学できっちり仲良しになること。ほら、さっさと校庭に出るぞ?」


 俺は2人を交互に見る。

 

「……何……?」


「……む〜……」


 ロリエルとガブリエル2世は少し睨み合い、プイッと横を向いて教室を後にした。

 今更だが、大丈夫かな。


 ——


 校庭にはメタトロン先生の姿が。どうやら人間界へ繋がる扉を開くのはこの幼女らしい。


「お前……いま幼女と言ったか?」


 な、何なんだこの人、てか天使はっ!

 いつもピンポイントで心の中を読みやがって。


「まあ良い。くれぐれもちゃんと引率する事だの。天使衣エンジェルローブの効果で人間に視認されることはないが、もしもの事があっては始末書では済まんぞ?」


 天使衣エンジェルローブ

 今、俺達全員が身につけている透明なローブのことだ。聞いたところ、コレを身に付けていると人間に認識されないらしい。

 つまり、人間界を俺達みたいな集団が歩いていても気付かれないという仕組みだ。

 天界には便利なものがあるのだな。



天扉ヘヴンズゲート解放! 天界と地上、人間界を結べ!」



 メタトロン先生が地面に施された魔方陣の上で力を解放する。いつもは小さな背中の羽は金色の光を放つ翼へと変貌する。


 日替わりのシュシュで結ったポニーテールがふわふわと揺れ、先生の身体は宙を舞う。


 その姿は、神々しい。


 神々しい幼女だっ!!



 こ、これが正天使の力! いや、そもそもメタトロン先生って、何天使なんだろう?


 辺りに閃光が走る。眩しいっ、悪魔にはキツ過ぎる眩しさだ。恐るべし幼女ぉ……


 暫くして光が消えたのを確認し、俺は目を開けた。そして驚愕した。

 目の前にはとてつもなく巨大な光の扉、

 天扉ヘヴンズゲートがそびえ立っていた。


「ふぅ、よし。ゲートは開いたぞ。私はここで待機しておるから、引率の先生方はくれぐれも気を付けるように頼むぞ?」


 因みにこの学校の1年は6組存在する。

 サハクィエル先生は俺に眩しく微笑み、頑張って下さいね、と言って自分のクラスをゲートへ誘う。

 本当に眩しい笑顔だ、そして、素晴らしい双丘だ。それはさておき、


「よぉーし、俺達も行くぞ? 1班から順にゲートを通り抜けろー。抜けた先で待機すること。絶対に勝手な行動をとるなよー?」


「わかったっす! それじゃあ1班の皆んな、行くっす!」


 マールはメンバーを引き連れて扉を通り抜けて行った。


 その後、順番に通り抜け最後はカマエルの4班だ。カマエルは元気に、行くぞー! とはしゃぎながら扉を通り抜けた。その後をラミエル、そしてガブリエル2世とロリエルが追い、全員が扉を通り抜けた。


 さぁ、次は俺だな。ちょっと緊張するな。魔界にいたら経験出来ないことだからな。

 いや、それより何より、横から気持ち良さげな寝息が聞こえるのだが?


 メタトロン先生は器用に浮いたまま気持ち良さそうに昼寝と洒落込んでいる。いや朝寝か?


 俺は少し聞きたいことがあったが、あまりにも気持ち良さそうに眠るロリトロンちゃんを見て起こすのを諦めた。


 そして、天扉ヘヴンズゲートを潜った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る