14時限目【続・休日の天使】


 ◆◆◆◆◆

 遂に屋上へ到着した白き天使ロリエル。

 マールやカマエルに見つからずに、無事、ミッションを遂行することが出来るのだろうか!?

 今回も戦隊マニア天使ロリエルに密着しよう。

 ◆◆◆◆◆



 顔を出した途端、私の心拍数は急上昇。まるで胸が踊っているようだわ。AAカップだけど。

 鼻息を抑えないと、でもでも、

 こんなの正気じゃいられないよーーっ!! 


 前に行きたいのは山々だけれど、とりあえず柱に隠れてショーを楽しもう。見つかるとマズいわ。


 ☆☆☆☆☆堪能中!☆☆☆☆☆


 最っ高〜!

 ショーは後半に差し掛かり、各レンジャーの必殺技が披露され大いに盛り上がりを見せている。

 勿論、デビパープルの必殺技、

 ——悪魔ゆフラッシュも炸裂したよぉ!!


 せ、説明しよう。悪魔ゆフラッシュとは、


 言わずと知れたデビパープルの必殺技よ!

 デビパープルの特徴は、ずばり、そのキリリとした立派な眉毛なの! あぁ! 凛々しい!

 変身後も眉毛は健在で、そこから放たれる悪魔ゆフラッシュは悪者をフサフサ眉毛に変えて吹き飛ばすチート技なのよ!!


『眉毛と化し散れぃ! 悪魔ゆフラッシュ!』


 あ、でも眉毛に耐性のない者には理解し難いこともあってか、人気は最下位なのよね。

 安心して、デビパープル! 私がついてる。世界中が眉毛を拒んでも、私だけは貴方の理解者よ。


 悪い怪獣をやっつけたデビレンジャー達はいつもの決めポーズでショーを締めくくった。

 会場からは盛大な拍手が沸き起こっている。


 私は柱に隠れながら、心の中で盛大な拍手をおくったわ。勿論、デビパープルに。


 そして遂に、最大の好機チャンスが!


 ラッキーな事に行動の早いマールちゃん達は前の方に並んでサクッと写真撮影を済ませて、上機嫌でその場を後にしたの。つまり、今、私のことを知る者はこの会場には居ないわ!


 ◆◆◆◆◆

 フォルネウスはいるのだが。

 ◆◆◆◆◆


 何か聞こえたかしら?


 今はそれどころじゃないわね。私はすかさず列の最後尾についたわ。なりふり構ってられない。

 手にはBlu-ray特典の半券。よし、ちゃんとあるわね。少し汗で濡れちゃってるけれど、うん、問題ないわ。周りは子供だらけ。しかも男の子。


「おねーちゃん、でびれんじゃーすきなの?」


 前に並ぶ男の子が私に話しかけてくる。瞳がキラキラしていて可愛いな。

 えっと、返事しないとね。


「そ、そそ……そうよ? おかしい?」


「そんなことないよ! ぼくは、でびぱーぷるが好きなんだぁ! おねーちゃんはぁ?」


 なっ!? デビパープル推し!!

 ……この男の子、いえ、この漢!!


 出来るっ!!!!


「デビパープルの良さが……わ、わかるなんてっ……おほん、貴方はセンスが良いわ!」


 いやん、興奮を隠せないっ!


「あくまゆふらっしゅ! かっこいーよね!」


「か、格好良いって言葉だけで片付けるなんて出来ないくらい眩しい光だよ! あれは!」


「まゆげとかしちれい!」


「「悪魔ゆフラッシュ!!」」


 つ、つい男の子と一緒に必殺技を決めてしまったわ。でも、凄く楽しいわ。

 他人と同じ趣味を共有することが、こんなに楽しいだなんて、私は、——もしかしたら私は物凄く損をしていたんじゃ……


 眉毛話に花が咲いて時間を忘れていると、男の子の順番がやってきた。可愛らしい男の子は私に、またね、と言って、しっかりデビパープルとのツーショットを撮る。

 男の子は嬉しそうに手を振り母に手を引かれ帰っていった。良かったね、少年!


 次は私の番だ!


 緊張のあまり、小刻みにプルプルしながらも、夢にまで見たデビパープルとの握手を交わし、ついでに眉毛も触ってみた。

 フサフサの眉毛に私の細い指が刺さる。


 最後は悪魔ゆフラッシュのポーズでツーショット写真を撮ったわ!!


 mission complete!


 誰にもバレずに全てのミッションをクリアしたんだ! これは家宝レベルの代物だよ!

 私は写真を大事に鞄にしまった。


 帰ろう! 帰って一日中この写真を眺めよう!


「ふふふ、ふふ、——」


 ◆◆◆◆◆

 無事ミッションを遂行したロリエルは、不敵な笑みを浮かべながら帰路につくのであった。

 その一部始終をフォルネウスに見られていたとは思いもせず、スキップなんかしちゃう白き天使、ロリエルであった。

 何はともあれ、良かったよかった!!

 次回からは、再び悪魔教師フォルネウスの視点に移るぞ! いざ、決戦の時!

 ◆◆◆◆◆











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