13時限目【休日の天使】
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さて、リベンジの前に少し趣向を変えてみよう。
前回、フォルネウスに一部始終を目撃されたロリエル。今回は、そのロリエル、——隠れ戦隊ヒーローファン、しかも推しはパープルな天使の視点から、休日を覗いてみるとしよう!
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街の商店街を抜け少し歩くと住宅街の中にポツリと佇む喫茶店がある。
low Leeds café、私が切り盛りする喫茶店。
私は家庭の事情で祖父母に預けられている。
歳の離れた兄は突然出て行ってしまい、その後は音沙汰もない。
元々はこの喫茶店も兄が始めたものだった。
祖父母は歳で働けないのもあり、居なくなってしまった兄の後を継ぎ、大好きだったこのカフェを継いだのだけど、正直売り上げなんてないようなもの。
楽しみといえば、大好きなテレビ番組くらい。
魔界戦隊デビレンジャー
魔界で少し前に放送されていた戦隊ヒーロー物の1つみたいで、今、天界で人気が急上昇中!
私はそんなデビレンジャーの、隠れファンなの!
そして今日は、待ちに待ったイベントの日!
各地を回っていたデビレンジャー達が、遂にこの街にもやって来たのよ!
予め買っておいたBlu-rayの特典にはこのイベントでの握手会と写真撮影サービスを受けられる半券が同封されている。想像しただけで倒れそうよ。
私は日曜日だというのに、お店を閉め半券と小さな鞄を持って街に繰り出した。デビパープルに会うためなら、お店なんて閉めるわ!
さて、それはそうと私はデビレンジャーファンだけれど、その事実を知る者は、一緒に住む祖父母しかいない。まさに隠れファン。
本当はマール達の話に入り盛り上がりたいところだけれど、中々あの勢いにはついていけない。
そして何より、キャラ崩壊……
そう、私と言えば孤高の存在、クールでミステリアスが売り。そんな私が……
そんな私が隠れデビレンジャーファン、しかもデビパープルのファンなんて、あぁ言えないわ。
はっ! 違うの! 別にデビパープルがコア過ぎて恥ずかしいとかじゃないのよ?
ちょっと、今すぐデビパープルに謝りなさい!
と、興奮して取り乱しちゃったけれど、ネットで買ったBlu-ray特典を無駄にするわけなわけにはいかないもの。——こんな機会はこれを逃すと100年は訪れないかも知れない。ここは何としても、
誰にもバレずにデビパープルとツーショット写真を撮いたい! いいえ、撮るんだ!
絶対にっ!!
私は胸に滾る熱い想いを表に出さぬよう、何食わぬ顔で街を歩く。この日の為に買ってもらっちゃった可愛い真っ白なワンピースを着て、肩からは財布だけが入るくらいの小さなショルダーバッグをさげ、街一番のショッピングモール、天の川モールへと足を踏み入れた。
モール内はいつものように賑わっている。
苦手な人混みを掻き分け、1人屋上へと向かう私の心拍数が徐々に上がっていくのがわかる。小さな胸から、今にも飛び出してしまいそう。
落ち着くのよ、ミステリアスガール!!
たかぶる気持ちを抑えながら、エレベーターに乗り最上階まで登り切った私はそのまま屋上に繋がる階段室へ。——その時!
階段を凄い勢いで駆け上がってくる、見覚えのある2人の姿が見えてしまったわ。
げ、マールちゃんとカマエルちゃんだ……
ま、まさか彼女達もイベントに?
どどどどどどうする? このままここにいるとバレるわよ!? それは、ちょっと嫌かな。
いえ、ここで私もデビレンジャーが好きだと告白してしまえばどれだけ楽になれるだろうか。
「カマエルちゃん、もう少しで屋上っす!」
「よーし、ラストスパートぉっ!」
物凄い勢いで屋上へと駆け上がっていく2人のあとを、少し不機嫌な表情でフワフワと付いていくガブリエルちゃんが……
私は思わず隠れてしまった。
気が付くと柱に隠れていた。
諦める? いいえ、行くしかない!!
ここまで来て、何も得ずに帰るなんて、——喫茶店で大好きなパフェを頼んで、食べずに帰るようなもの。考えただけで白目になるわ。
私はマールちゃん達が見えなくなったのを何度も、な、ん、ど、も! 確認して階段を登った。
屋上からは魔界戦隊デビレンジャーの主題歌のイントロが聴こえてくる。私は急いで階段を駆け上がり、そっと顔を出してみたわ。すると、
そこにはデビレンジャーが!!
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頑張れロリエル! 君なら大丈夫!
大好きなデビパープルまで、あともう少しだ!
次回につづく!!
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