このゲーム(恋愛)には必勝法がある。(終)


決行は今日だ。


今日、俺達の関係を決着させる。


それぞれと色々あったけれど、俺に好意を伝えてくれたのは紛れもない事実。


そして、俺へ向けるその好意は、のも事実。


「全員揃ったか」


俺の部屋に集まったのは総勢5人の美少女。彼女達全員が俺を好きで……いや、愛してくれているという事実は、正直男として満たされるものがある。



「健人!私を選んでくれるんだよね?そうだよね?」


「お兄ちゃん!この女狐に靡くなんてありえないよね?もしそうな──


「はいはい。一旦落ち着け」


先行して麻紀と光が問い詰めてきたが、一旦黙らせる。


今日の主導権は俺が握る。


「今日みんなに集まってもらったのは他でもない。俺の彼女をみんなの中から決めたいと思う」


とてつもなく傲慢な言い草だと自嘲した。彼女達からの好意が無ければ──いや、あっても外野からは相当痛い奴に見えるだろう。


「……私、だよね。そうだよね」


「……健人」


自らが選ばれる事を信じて疑わない様子の麻里亜と、何処か縋るように俺の名を溢した栄美子。


「もう、結論から言う」


そんな彼女達を無視して俺は単刀直入に切り抜ける事にした。変に時間をかけるとそれこそ争いが発生するだろう。



嘘。


確かにそれぞれにある程度の好意を持っているが、好きかと言われたらはっきりとイエスとは断定できない。


莉子に至っては申し訳ないが無理だ。きっと時間が光と莉子の関係を改善してくれるはずだが、その問題のケジメがつけられない限りは、好きにはなれない。


「……私も好き。大好き!」


「みんな」という部分が聞こえなかったのか、はたまた聞いて聞かぬふりをしているのか分からないが、麻紀が惚けた顔をしながら抱きついてきた。


「麻紀ちゃん、離れて!」


無理矢理麻紀を俺から引き剥がす光。


「……ねぇ、健人……どういうこと?みんなって何よ。私だけでしょ?」


「なんで?私だけで十分じゃん」


「先輩には私だけが必要なんですよ?何を言ってるんですか?」


「ちょっと全員、一旦黙ってくれ……いや、黙ってろ」


かなり尖った言葉だと自覚しているが、こうでもしないと彼女達を制御出来ないのは自明だ。


「……怖い」


声が判別できない程に小さく、それでいてしっかりと誰かがこぼした。


「元々俺はそういう奴だ。どうだ、失望したか?お前らが好きになった男はそういう奴なんだよ」


「「「「「………」」」」」


沈黙。動揺が目に見えた。


「……まあいい。話を戻す。俺はみんなの事が好きだとさっき言ったと思うが、彼女を誰にするかは決めてない。いや、。場合の数は一つのみ。それ以外の結果を俺は受け入れない」


「……どういうこと?」


一度、深呼吸して、ゆっくりと息を吐き終えた。


「もう薄々勘付いているかもしれんが、ハッキリ言っておく。これは頼みじゃない、命令だ。






瞬間、空気が凍った。


「ど、どういうことよ!」


他の4人が固まっているのにもかかわらず、いち早く声を上げたのは栄美子。一番倫理観がしっかりしていることからも、必然と言った所か。


「なんだ、栄美子は何か不満なのか?」


「不満も何も、こんなのおかしいよ!」


その通りだ。


「……まあそうだな。世間一般の常識には沿っていない。男尊女卑の時代錯誤と捉えられても仕方がないかもな」


「な、なら──


「じゃあ、ことにする」


「……ふぇ?」


ここで俺は、最強かつ、彼女達にとっては最恐となるだろう切り札を切る事にした。


「俺はみんなの事を好いているが、強制をするつもりは無い。他の女子と一緒に俺と付き合えないと思うならば、正直に言ってくれ。俺はそれを受け入れる。受け入れた上で、


「「「「「………」」」」」


このカードは正しく必勝。俺と一緒にならないという選択肢を微塵も考えていないだろう彼女達にとって、俺と付き合う道を選ばざるを得ない。


「栄美子、どうするんだ?俺はさっきも言ったが強制はしない。君の事は愛しているが、君の幸せを一番に考えている。君が選ぶ選択肢を尊重する」


反吐が出る。こんな、女を弄ぶ男にはなりたくなかった。


「……」


「黙ってちゃ分からない」


「……」


「……じゃあ、俺と付き合わないという事でいいんだな?おーけー。さようなら、幸せになれよ。俺は他の4人と付き合うから」


そう言って冷たく突き放そうとしたが、ガシッと腕を掴まれた。


「……ます」


「……ハッキリ言ってくれ」


「……健人の、彼女に……なります」


怒りか、悲しみか、はたまた苦しみか。彼女は顔を歪めながらも、そう言った。


勝った。


1人落とせば後はドミノ式。俺の勝利は揺るがない。


「……そう言ってくれると信じてた」


俺は彼女の頬にキスを落とす。背中から殺気が猛烈に突き刺さった。俺はその4人に問いかける。


「……他の4人はどうするんだ?」


もう、結果は見えていた。


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おまけ(5人のうちの誰かとの会話)


「もう私達が付き合って結構経つよね」


「そうだな」


「付き合う時の健人、ほんとに最低だったよね」


「……悪かったよ。ああでもしないと無理だったんだよ」


「……あはは、まあそうだよね。あの時の私達ってちょっとおかしかったもん。きっと、誰か1人を選んでたら、それこそ殺し合いとかになりかねなかったし」


「という割にはナイフ出さんばかりの勢いで抵抗してたけどな」


「……いや、あの時はさ、健人が私以外の子とも付き合うなんて受け入れられなかったから」


「まあ、普通はそうだよな」


「「……」」


「……後悔、してるか?」


「してないよ。どんな形であれ、あの時にあの告白を受け入れなかったら、今こんなに幸せじゃないはずだもん。きっとそれはみんな一緒」


「……ありがとな。お前らの事、絶対幸せにする」


「……さっきもう幸せって言ったじゃん」


「より幸せって事だよ」


「そうだよね。そんぐらいしてもらわないと。『全員、俺の女になれ』ってあんなにカッコよく決めちゃったんだから」


「……それをイジるのはやめてくれ」


「『命令だ』なんて俺様感も出してたよねー」


「……勘弁してくれ」


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一応、後日談は書くつもりではいますが、ここで一旦この物語は区切りとさせていただきます。今まで本当にありがとうございました。



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罵倒してくる女子達にガン無視決め込んでみた結果 @qpwoei

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