目を逸らし続けてきた現実。決める覚悟。

3ヶ月後。


暗闇に包まれた寝室。俺は一人でに頭を抱えていた。


遂に、この時が来てしまったと、身を持って知った。


──お兄ちゃん。私を選んでくれるよね?そうじゃなきゃ、私、どうなるのかわかんないや。もしかしたら、


──私達、ずっと一緒だったもんね。私を選んでくれるよね。だって、私達元々愛し合ってたじゃん。今はちょっと女狐が群がってるだけだから、ね。なんなら、


──先輩。私、不安なんです。私がしでかした事は凄く重い罪だってわかってるけど、先輩に愛されないんじゃ、


──2人で行ったコスプレショップ、楽しかったね。また行きたいね。今度はもっと深い仲になってから行きたいな。……私、待つとは言ったけど、いつまでも現状維持じゃいやだよ?しっかり他の女達を断ってね?


──健人はさ、私の事、好きだよね。私ね、最近辛いの。苦しいの。健人がさ、もし他の女と付き合って、私が選ばれなかった時のことを考えると、本当に死にたくなるの。一人で布団の中で泣いてるの。……おかしいよね。私、こんなに弱い女じゃなかったのに、ね。……


昨日の夜の光。今日の登校中の麻紀。ダイレクトメッセージでの莉子。生徒会室で麻里亜先輩。バイトでの栄美子さん。


確実に俺への愛が深くなっている。


自惚れなんかじゃない。事実だ。


、か」


ふと、麻里亜先輩の言葉が反芻された。本来彼女が自分に向けて放った言葉だったが、本当は俺に向けて放ったのではないかと勘繰ってしまうほど、今の俺の体に染み込んだ。


「……そうだよな」


見て見ぬふりをしてはならない。



それが指すものは、すなわち死である。


たかが、高校生の色恋沙汰と侮ることは最早出来ない。みんな、目が本気だった。


俺はこの悪夢を阻止しなければならない。それが、この特殊体質フェロモンを持って生まれた俺の責務なのだろう。


もし、それをする事によって、彼女達が本当の幸せを掴み取る事が出来なくなったとしても。


たとえ、俺が屑に堕ちようとも。どんな手を使ってでも、俺が彼女達を死から救う。


その覚悟を決める時だ。



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あとがき


自殺したら地獄に行くっていう言い伝えはありますよね。私自身、それを信じているかっていうと信じてないですけど、もしかしたら栄美子は信じているのかも。

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