登録者数えぐいって
「俺も入れてみっかなぁ」
今まで何度か検討してみたものの、結局は踏み出してこなかったSNSの壁。今まではSNSにさほど興味を持っていなかったが、ここまで周りがやっていると俺もそのSNSとやらを体験したくなった。まあ、ただの好奇心である。
「……よし、インストールっと」
アプリストアから該当のSNSアプリをダウンロードする。有名所が3つか4つ程あるそうだが、その内の一つを試しに入れてみた。
メアドやパスワードなどの初期設定をこなしていく。
「……アイコンかぁ」
初期のままだと人みたいなグレーの画像なのだが、それだと少し味気ない。
とりあえず無難にリサたんの画像を貼っておく。
とりあえず一通り設定が終わった後、ふと思い出した。
莉子が異様にSNSに勧誘してきたな、と。
相変わらず負い目も感じずに(感じているのかもしれないが)俺にバキバキ話しかけてくる莉子だが、その時に何度かSNSの話が出てきた。
何度もしつこく勧誘してきた彼女に報告もしないのはどうかと思い、莉子にメッセージを送る。
「……いや既読早すぎやろ」
SNSを入れた旨を伝えるメッセージを送った瞬間に既読が付いた。そして俺がツッコミを入れている合間にもコール音。勿論莉子からである。少し生き急ぎ過ぎではないだろうか。
なんて考えながらも通話ボタンを押す。
「先輩!やっと入れてくれたんですね!」
「……まあ、あそこまでしつこく勧誘されちゃな」
「じゃあ私のアカウント送るので登録してください!」
「……りょーかい」
そこで電話が切られた。その数瞬後にQRコードが送られてきた。
このSNSにもQRコードのシステムがあるのか、と感嘆しながらもそれを読み込む。
その直後。俺の中で電撃で打たれたかのような衝撃が走った。
「………嘘だろ」
送られてきたアカウントの登録者数は36万人。俺が衝撃を受けるのも致し方ないだろう。
今度は俺から電話をかける。莉子はすぐに電話に出た。
「……莉子、モデルでもやってたのか?」
「むふふ!びっくりさせちゃいましたかねぇ!」
ドヤ顔の莉子が目に浮かぶ。
「……いや、マジでびっくりしたわ。……なんか凄いな。世間に認められてるって」
「たまに案件も来るんですよ?私はやったことないですけどね」
「……すげぇ」
語彙力を失う程に俺は衝撃を受けていた。こんなにも身近な莉子が、何処か遠い人間に思えてきた。
「私もフォローしますね!」
「……わかった」
なんかフォローされんの怖くなってきたな。とはいえ、今からやっぱりフォローしないでくれなんて言える訳も無く。
「フォローしときました!私の投稿もしっかり見ておいてくださいね!……じゃあ、名残惜しいですけど、この後用事があるので電話切りますね」
「おーっす。じゃあなー」
電話が切られた後に、莉子の投稿をスクロールして見ていく。
「……いや、可愛いな」
登録者数が36万人いるのも納得できる魅せ方の上手さだ。素の素材が良いのもそうだが、SNSの莉子は普段より大人びて見え、それでいて普段の幼い可愛さも残していた。矛盾する二つの要素が混ざり合って、何処か神秘的までもある。
そのままスクロールしていくと───
「……いやぁ、マジか。そうだったわ」
スマホに映るのはハワイでの一枚。写真の右には横を向いている俺。まさかあの時撮られたのかと思うと同時に、俺の顔には目元に申し訳程度の加工しかしていないため、ワンチャンバレる可能性があることに気づく。
……やべえよ。いじめられてた子の兄といじめっ子が海外旅行行ってたなんて気づかれたら俺終わるやん。
「……はぁ」
呆れると同時に、莉子はこんな奴だよな、と何処かで会得がいっている自分がいた。
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あとがき
遅れてごめんなさい(素直な謝罪)
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