ご飯を作る
「……ねみぃ」
時間を確認すると午前の5時20分。なんだか変なタイミングで起きてしまったらしい。いや、起こされたと言う方が正しいな。
爽快な起床だなんて口が裂けても言えやしない。
「光……」
胴体に絡み付く光の華奢な腕が見える。どうやら光は仰向けに寝た俺に抱きついて寝ているらしい。
耳を済ませると、「すぅ……すぅ……」と微かに規則的な呼吸音が聞こえてくる。
一緒に寝る約束を果たしたは良いものの、まさかこんな事になるとは。
「……まぁ、怒ってもしょうがないしな」
光に抱きつかれてしまったが為に起きてしまったのは明確だが、寝相なんて誰しもコントロール出来る訳がない。
ここは一つ、太平洋よりも広い俺の心で受け止めるとしよう。
そんなこんなで考え事をしていたら、もう二度寝する気も無くなってしまった。せっかくなので、今日も仕事がある父さんと母さんの朝ご飯を作ってあげようか。
そうしたら2人も余裕を持って会社に行けるはずだ。
こんな事が出来るのも長期休暇のお陰だな。なんて考えながらも顔を洗いに行こうと光を優しく剥がしてベッドから足を出す。
「ん……お兄ちゃんおはよぉ……」
……しまったな。優しくしたつもりだったけど、起きちゃったか。
「おはよ。でも5時半ぐらいだからまだ寝てな」
「……お兄ちゃんも寝よーよぉ……」
「いや、折角早く起きた事だし、父さんと母さんの朝ご飯作ってくるよ」
「……いっしょにつくる」
「無理しなくてもいいんだぞ?」
「……いっしょがいい」
寝ぼけ眼を擦りながらもベッドから出てくる光。人類共通で難しいと言われる起きた直後にベッドから出るというプレイを見せられたからにはもう断れる訳がない。
「わかった。久しぶりに一緒に作るか」
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「何作るの?」
2人でキッチンまで来たのは良いものの、何を作るのか全く決めていなかった。
冷蔵庫を開けて食材を確認し、頭の中で構想を考える。
「えーっと……パンと卵とマヨネーズとチーズを使ってエッグトーストと……コンソメとか諸々の野菜でスープを作るか」
少ないような気もするが、朝だからこんなもんで良いだろう。
「わかった!じゃあ私はスープね!お兄ちゃんはトースト!」
父さんと母さんの帰りが遅い為、夕飯はよく2人でご飯を作っているからどっちも料理を作れはするが、俺は上手さも速さも光に劣っている。
元々、光が学校に行っている時は、彼女が陸上部に入っていたこともあって俺が料理を作っていたのだが、今現在は光が作っているので、彼女と俺の料理の巧拙は見事に逆転してしまった。
簡単なエッグトーストを俺に任せるのは妥当だよな。
「わかった。怪我しないように気を付けろよ」
「お兄ちゃん、何年料理やってると思ってんの!」
「そうだよな。まあ一応な」
本格的に料理を作り始めたのはここ最近なのにも関わらず、光は料理には絶対の自信とプライドを持ち合わせているらしく、変に心配するとプリプリ怒り出す。
長期休暇で母さんが作ってくれる事もあり、最近は料理を一緒に作っていない為、すっかり忘れていた。
この辺に関しては少し理不尽と思わなくはないが、それも含めて光なんだなと納得している。
「よし、じゃあ作るか!」
パンを出して、中心を開けるようにしてマヨネーズを絞り出す。
本当はベーコンも使いたかったが、無いものは仕方ない。
中心に卵を割って、マヨネーズの上にスライスチーズを乗っけてトースターに入れて5分にセットする。
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……………………………
…………………
………
…
「………終わったやん」
……まあ、時間が掛からないに越した事は無いもんな、うん。
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「2人ともありがとうね。本当に助かるわ」
「助かるよ」
「のんのん、こんなの朝飯前だよ!」
「まあ、朝飯を作ることが朝飯前になるのは当たり前だけどな」
「もう!お兄ちゃん空気読んで!」
しばらくして起きてきた父さんと母さんがしっかり喜んでくれたので、2人で作った甲斐もあったもんだ。光も感謝されたからか普段の2、3割増しに上機嫌だ。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「料理、作った甲斐があったね!」
光はとびきりの笑顔で、そう言った。
「……そうだな」
ほんと、うちの妹は無邪気で可愛い。
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あとがき
光回はこれでおしまいかな?他の女子がこれ以上黙ってる訳ないもんね。
*100万pv行きました。ここまで行けたのは応援してくれている皆様のお陰です。本当にありがとうございます!
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