やっぱり僕は……修羅道を征くぅ
「お邪魔しまーす!」
誕生日パーティー当日。一番に乗り込んできたのはやはり麻紀。予定の時刻より30分も早い登場だ。
……まあ、麻紀らしいけどな。
「お、麻紀ちゃん来たか」
「麻紀ちゃ〜ん!お食事会振りね!」
「お義父さん!お義母さん!お邪魔してます!」
お父さん、お母さん呼びは今に始まった事でもないし、特に驚く事もないが、麻紀がうちの両親の心をガッチリ掴んでいる事を再確認する。
「健人!誕生日おめでと!」
「ありが──お、おい!」
お祝いの言葉を放った瞬間麻紀はノータイムで抱きついてきた。いや、父さんも母さんもニヤニヤするな!
「はみぅ……健人の体温……あったかぁぃ」
あぁ、もう。目がトロンとしてきてるじゃん。俺の親の前だって事忘れてるだろ。
麻紀が甘えてきてあたふたしていると──
「………麻紀ちゃん。お兄ちゃんから離れて」
背筋が凍った。光のドスの効いた声にみんな呆気にとられてポカンとしている。
二階から降りてきた光は俺達を睨みつけて──
ピーンポーン
「け、健人。昨日言ってた友達が来たんじゃないか?」
父さんナイス!
「そ、そうだね。ちょっと出てくるよ」
……助かった。修羅場になりかけたけど、運良く救われたぜ。
俺はすぐさま玄関に向かい、インターホンを取った。
「島崎です……」
どうやら2番手は麻里亜先輩のようだ。
モニター越しで見る彼女は、モジモジしていて目線も安定していない。……うん、めっちゃ緊張してるな。
「開いてますよー」
「は、はぃ……お邪魔します……」
麻里亜先輩がドアを開けた。彼女の服装が目に入る。
……うわ、今日も可愛いな。
「麻里亜先輩、今日の服装も似合ってますね」
これは褒めずにはいられない。
「そ、そう?……良かったぁ」
麻里亜先輩は顔をむにゃっと綻ばせた。
「……健人、私の服装は褒めてくれなかったのにね」
「うぉ!」
後ろからいきなり麻紀に話しかけられたもんだから思わず驚いてしまった。
…………麻紀の服装か、もう十何年も色んなバリエーションの服装を見ている訳で………なんというか、もう見慣れちゃって刺激が足りないんだよな。
「麻紀もよく似合ってるよ」
かと言って褒めないと色々拗れそうなので褒めておく。嘘は言っていない。……これも麻紀を知り尽くした俺の処世術だ。
「そう?健人の為にお洒落してきた甲斐があったな……えへへ」
やべぇ。心が痛えよ!そんな幸せそうな笑みで俺を見ないでくれ!
「と、とりあえずリビング行くか」
「うん……」
「わかった!」
心の痛みから逃げるように話題を逸らし、麻里亜先輩をリビングに案内した。
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「し、島崎麻里亜です!よろしくお願いします!」
リビングに入った途端、麻里亜先輩は挨拶をし始めた。
「……健人、お友達って……女の子だったの?」
母さんはどうやら友達が女の子だった事に驚いているようだ。
「母さん、ごめん。言ってなかった。ちなみにこの後来る友達も女の子だよ」
「は?」
「え?」
「ん?」
光と麻紀、そして麻里亜先輩。ハイライトの無い目で俺を睨むのは止めような。めちゃくちゃ怖いから。
「と、とりあえず麻里亜ちゃん、今日は来てくれてありがとね」
修羅の雰囲気を感じ取ったのか、とっさに母さんが麻里亜先輩に話を振った。
「と、とんでもないです!好きな人の誕生日を祝いたいのは当然の事ですし!」
……平然と好きな人言うなし、めっちゃ恥ずい。
「あらあら。健人、モテるのねぇ」
母さん!またニヤニヤしてんな。しばきたい。
ピーンポーン
不意に、インターホンが鳴った。
「ちょっと行ってくる」
恐らく栄美子さんだろう。俺が彼女を呼びに行く間に3人にはハイライトを取り戻して欲しいものだ。
俺はリビングから出てモニターを見る。
やはり訪ねてきたのは栄美子さんだった。
「開いてますよー」
麻里亜先輩の時と同じように中へ誘導する。
「お邪魔します」
ドアが開いた瞬間、栄美子さん特有の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。……この匂いめっちゃ安心するんだよなぁ。
「健人、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます……って、栄美子さん……めちゃめちゃ清楚ですね。前のデートの時みたいです」
「……うん。健人のお父様やお母様に気に入ってもらえるように安定の清楚コーデで来たわ」
「気に入ってもらう……それはまたどうしてです?」
俺が疑問に思った事を直球で聞くと、栄美子さんは頬を赤らめて──
「そ、そんなの……将来結婚した時に仲が良い方がいいじゃない……」
「け、結婚!?」
やべぇ。びっくりし過ぎて大声出してしまった。
恐らくリビングにも聞こえてしまっただろう。
つまり…………確実に来るぞ…………
「健人!また他の女誑かしたんだ!」
「お兄ちゃん!説明して!」
「健人!結婚ってどういう事!?」
ヤンデレズは来ると思ってたけど、麻里亜先輩まで……
あぁ……もう俺の手に余るな……これ。
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なんとか3人を宥めて、みんなをリビングに連れてきた。
「宮原栄美子と申します。今日はお招き頂きありがとうございます」
俺から招いたわけじゃないとか、野暮な事は言わない。
「……変な事聞くけど、栄美子さんも健人の事が好きなの……?」
母さん、いきなりそれかよ。
「はい。健人君の事はお慕いしております」
超絶恥ずかしい。というか、服装だけじゃなくて口調も清楚でいくらしい。流石財閥の娘といった所か、めちゃくちゃ様になっている。
すると、麻紀が栄美子さんの前に立って──
「栄美子さん……でしたっけ?残念ながら貴女の恋は叶いませんよ?だって健人は私に惚れてるからね」
いや麻紀ぃ!何故初対面で煽るぅ!
「は?麻紀ちゃんつまらない冗談はやめて」
ほら、光も怒っちゃったじゃん。
「麻紀ちゃん、何言ってるの?健人は私に惚れてるんだよ?」
いや麻里亜先輩まで……。
誰か助けてくれ………。そうだ!父さん!
「母さん、父さんは?」
「なんか胃が痛いって言ってトイレ行ったよ?」
……いや、俺の方が胃が痛いわ、確実に。
先行きの見えないこのパーティー。一波乱ありそうで、思わず俺はため息をついた。
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あとがき
今回上手く書けてます?自分的にはあんま上手く書けなかった……
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