嵐の前の静けさ……なのか?

「せんぱい!お昼食べましょ!」


「お、来たか」


昼休み。一番乗りで莉子が教室に来た。いや、正確に言えば元々教室にいる麻紀が一番なのだが、彼女は用を足しに行って今は教室にいない。


取り敢えず、外野からの不躾な視線に耐えながら残りの2人を待つ。


「先輩……私、本当にお昼一緒に食べていいんですか?……昨日は突っ走っちゃって光ちゃんの事も考えずに先輩とご飯食べちゃったけど……」


突然、莉子がそんな事を聞いてきた。


「あぁ、全く問題ないぞ。光にもちゃんと許可は取ったからな」


もちろん光にはいい顔をされなかったが、ちゃんと説明した。。恐らく彼女にとって昼休みの弁当の時間が唯一の楽しみになっているということ。それすらも莉子から奪ってしまうと彼女は本当に病みかねないということ。


虐めの加害者となれば避けられ、孤立するのも当然で、自業自得と言えるが、だからと言って彼女が病んでいくのを指を咥えて見ている訳にもいかない。


それを伝えると、渋々といった感じで了承してくれた。家にいる時は光の事を甘やかしまくるという条件と引き換えに。


……2人の精神面をケアするのも中々骨が折れるな。


だが、これも光の兄として、莉子の先輩としての務めなのだろう。


チラリと横目で莉子を見る。


俺と弁当を食べられるのが嬉しいのか、横でニマニマしている莉子を見ると、少しぐらいは骨を折ってやってもいいかな、なんて気分になった。


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「健人、今週の土曜にお邪魔するね」


3人が揃い、中庭で昼食を取っていると、麻紀がそんな事を言い出した。と言っても毎年の事なので脳死で了承する。


「おう、待ってるぜ」


「ちょっと……どういうことよ」


「そうですよ、先輩。……そんな家に来るのが当然みたいな雰囲気………」


透かさず莉子と麻里亜先輩からツッコミを受ける。


どこか2人とも顔が怖い。


「土曜は健人の誕生日パーティーがあるのよ。毎年私はお邪魔させてもらってるわけ。つまり私達はの仲なのよ」


麻紀は得意気に鼻を鳴らす。


ここぞとばかりにマウント取ってきたな……


「私も行っていいかしら」


不意に、麻里亜先輩が俺に聞いてきた。


「いいですよ」


「健人!?」


「……いや、別に断る理由が無いしな。むしろ祝ってもらえるなら大歓迎だろ」


「むぅ……………言わなきゃ良かった」


いや、こうなる事は予想付くと思うんだが。……やっぱり麻紀はアホの子なんだよな。


そんな事を考えていると、ふと莉子の口数が減っている事に気づく。


彼女に目配せして様子を伺う。


彼女は俺に「莉子はどうするのか」と聞かれていると思ったのか、目が合った瞬間口を開いた。


「私は……止めておきます。というかご家族が許さないと思います……」


まあ、そうだよなぁ。光だけじゃなく、父さんも母さんも居るわけだからそりゃお邪魔したいなんて言えないよな。


「まあ、こればっかりはしゃあなしだな」


「はい……。でも、プレゼントはポストに入れておきますね」


「お、ありがとな。楽しみにしてる」



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バイトの帰り。いつも通り栄美子さんと帰宅している途中、彼女からデートの誘いを受けた。


「その……健人?あの……今週の土曜!で、デート………しよ?」


その上目遣いは独学ですか?とんでもない破壊力なんですがそれは。


「ごめんなさい。誘いは嬉しいんですけど、その日うちで誕生日会があって……」


彼女の上目遣いにドキッとしたのをなんとか悟られないようにしながら断りを入れる。


「そう……そうなのね。………残念。ちなみに誰の誕生日会なの?」


「俺です」


「そうなんだ、健人の……………え!?健人の?」


典型的なツッコミを見せられて、思わずクスっと笑ってしまった。


「はい、実は今週の土曜日に17歳になります」


「え、おめでと。私も行っていい?」


「え?」


物凄い自然な流れで聞かれたもんだから思わず聞き返してしまった。


「私も行っていい?」


なんかめちゃくちゃ圧を感じるのですが………


あとその上目遣いは確信犯なら今すぐ止めてほしい。連続攻撃は耐えられない。


「いいですよ」


「やった!」


彼女はピョンピョン跳ねて全身で喜びを表現している。


え?栄美子さんそんなキャラでしたっけ?


……まあ、可愛いからいいか!


「プレゼント持っていくから楽しみにしててね?」


そんなとびっきりの笑顔で言われちゃ、顔を赤くする他ないだろう。










………てかこんな女子呼んで大丈夫か不安になってきた。


まあ、大丈夫だろ。………あ、これフラグになるのか。やべえよ。


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あとがき


昨日投稿しようと思って粘ったんですけど、びっくりするほどネタが思いつかなくて死にました。


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