デート

現在13時。駅前にて麻里亜先輩と待ち合わせている。


デートに行く時には、色々な商業施設があるからか毎回駅前集合なので、人々が奏でる喧騒も、主張が強すぎるあのバカでかい看板も、全て見慣れた光景だ。


デートと言っても別に急に決まったものではなく、麻里亜先輩を家に呼んだあの日の約束を果たす形のものだ。


ちなみに、あの時同時に光ともデートの約束をしたので、明日にでも光とに遊園地に行く予定だ。


……ちょっと俺女子とデートし過ぎか?これじゃまるでチャラ男じゃないか……。 


チャラ男じゃないよな?


「健人」


自分自身に自問自答していると、袖がぐいぐいと引っ張られる感覚があり、そちらを振り向くと……。


ジャージ姿の麻里亜先輩がいた。


「………ち、違うの!」


まるで不倫がバレた妻みたいになってますが……


「違う………とは?」


「……本当は!今日の為に買った可愛い服着てこようと思ったの!そしたら!なんか無くなってたの!」


「……無くしたんですか?」


「………そうよ!」


「じゃあ他の服を着てくれば良かったのでは?」


「前回健人の家に行った時の服はケチャップついちゃってクリーニングに出してあるし!他の服は処分しちゃったし!ほんとにジャージしか無かったの!」


クリーニングはまだしも、他の服は全部処分したってすごいな。麻里亜先輩は断捨離出来るタイプなのか。


「麻里亜先輩は服とかあまりこだわらない人だったり?」


俺が聞くと、麻里亜先輩は俯きながらぷるぷる体を震わせ、ガバっと顔を上げた。


「……何か悪い!?自宅の時は基本ジャージよ!おめかしするのだって貴方とのデートぐらいよ!」


……ちょっと今のはグッと来たな。貴方とのデートぐらいって、めちゃくちゃ男心わかってる。


まあそれは置いといて、お嬢様の先輩が自宅ではまさかのジャージとかいう新たな一面が発見されたな。


それによく見ると、萌え袖しながら顔真っ赤にして睨みつけてくる先輩……いいな。


……………ジャージ、ええやん。


「どうせ健人も失望したんでしょ!?デートにジャージ着てくる女なんてありえないもんね!」


ヤケになっているのかキレ気味でまくしたてる麻里亜先輩。……ジャージええのに。


「なんというか、今の先輩………めっちゃ萌えます」


「う、うるしゃい!」


噛んでる。可愛い。

 

「と、とりあえず服買いに行くわよ!ジャージだなんて恥ずかしくて死にそうよ」


「まじですか」


「なによ。不満なの?」


「いや……ジャージ姿の先輩も可愛かったので少し残念かな……と」


ジャージ萌えという新たな境地を見いだした俺からすると、このままジャージを着てほしい願望が少なからずあったので、少し名残惜しい。


まあ、確かに街中でジャージは目立つだろうし、先輩が嫌だよな。致し方なし。


「………やっぱり服買うのは無し」


「え?急にどうしたんですか?」


唐突の方針転換。先ほどの推察が的外れだった事がわかり、俺自身困惑してしまう。


すると、おもむろに先輩はもじもじし始めて──


「健人がジャージが良いって言うなら、ジャージにする」


上目遣いで俺に告げた。


………とんでもない破壊力だった。


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「ナカナカエイガオモシロカッタデスネー」


「ね!めちゃくちゃ面白かったよね!」


映画館で映画を見たのだが……正直、おもんなかった。……なんというか、セリフに脈略が無さすぎるというか、全てが唐突だった。


もう少し会話の部分が丁寧なら楽しめたのかな?なんて考えてしまう。


だが、どうやら麻里亜先輩には好評だったらしい。


「健人!ラストシーン本当に感動したよね!主人公がヒロインを─」


……まあ、麻里亜先輩が笑顔になったのなら、十分価値はあったよな。


「ちょっと!聞いてる?」


「あぁ、聞いてます聞いてます」


「それ絶対聞いてないやつだから!」


「……じゃあ飲み物でも買いに行きますか」


「話を逸らさないの!」


わーわー騒ぐ先輩を諫めるのは中々骨が折れるものだった。



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その後は、ウィンドウショッピングやゲームセンターなどで遊び倒した。


途中、同じ高校の生徒にジャージ姿の先輩を見られてしまいそうになるというアクシデントもあったが、総じて2人で楽しめた。


「もうここまででいいよ」


「家まで送っていきますよ」


「だって健人の家反対側じゃん。そんな事してたら健人が家に着くの凄く遅くなっちゃうよ?」


「いいんですよ。俺ももうちょっと先輩とお話ししたいですし」


「うぅ………わかった」


夜の帰り道。女性を家まで、少なくとも家の近くまで送り届けるのは男の義務とも言えるだろう。


先輩も言っていた通り、帰るのは遅くなってしまうがこればっかりはしょうがない。


「先輩は今日のデート楽しめましたか?」


「当たり前よ。………あ、貴方とのデートなんて楽しくない訳ないじゃない」


「………光栄です」


俺が照れているのは、闇夜に隠されてバレないはずだ。


「………ねえ、健人」


「なんですか?」


「私が健人に惚れたのって……どうしてかわかる?」


「いや、俺自身全く心当たり無いんですよ……」


なんだかんだで俺が知りたかった事でもある。


「自覚ないのも当然だと思う。私が健人に惚れたのって……ほんとにこれ!っていう出来事があったからとかじゃないの。生徒会で一生懸命に働いて、周りにも気配りができたり、時折見せる笑顔を見てたりしていたら、いつの間にか好きになってた……だからね?何が言いたいかというと……」


先輩は長く話して息が持たなかったのか、一旦深呼吸して──


「私!本気だから!ラノベのヒロインみたいにちょっと優しくされたからって好きになった訳じゃない!何ヶ月も貴方を見てきて、貴方の本質を感じ取って好きになったの!」


「………」


「だからね?貴方にキツく当たっちゃった私だけど、貴方も私を好きになってくれたら嬉しい……な?なんて。………えへへ」


最後の笑顔でノックアウトされたのは言うまでもない。


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(あとがきは特には)無いです。

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