サーヴァント 健人
「ただいま……」
「健人!大丈夫だった?」
どうやら俺が帰ってくるまで玄関に近いリビングで待機していたらしく、佐里姉ちゃんが周りに聞こえないように小さな声で俺に尋ねてきた。
声が小さいのは、母さんや光に事情を伝えてない証拠だろう。きっとこの様子なら警察にも連絡していない。
否応なしに安堵のため息が出てしまった。
「大丈夫だったよ。あの後2人で少し話し合って解決した」
「良かった……安心した」
もちろん2人で盛ったことなど言えるはずもなく、嘘をついてしまった。罪悪感で胸が痛い。
とりあえずさっさと風呂に入ろう。
佐里姉ちゃんがいる前でするとは思えないが、万が一光に抱きつかれたら、匂いで麻紀と会っていた事がばれかねない。
「心配かけてごめんね」
「これからももしああいう事があったら、私に相談するんだよ?」
「……ありがとう」
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「………ん、もう朝か………」
昨日は光の顔を見たくなくて、逃げるように寝床についてしまった。
「ん、通知来てるな……」
眠気を振り払うように寝ぼけ眼を全力で見開いて、メッセージの確認をした。
「栄美子さんからか……えっと、買い物に付き合いなさい、と」
まあ、丁度予定も無いしな。付き合うとするか。
「何時に何処にします?」
送信した瞬間に既読が付いた。
「1時に駅の近くのバーガーショップ前!ご飯は食べてくること!」
「デートとかじゃないんだから!あんたは荷物持ちなんだから!勘違いしないでよね!」
……つまりデートだと。
……既読の早さといい、ツンデレ発言といい、もしかしたら、栄美子さんは俺に気があるのかもしれない。なんて考えてしまった。
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駅前に着いてすぐに携帯で時間を確認する。
12時35分。
光や母さん、佐里姉ちゃんに友達と遊びに行くと言って出てきたは良いものの、少し早かったかもしれない。
とりあえずハンバーガーショップまで歩みを進める。
「健人!」
不意に、隣から声をかけられたので振り向くと──
「……!」
超絶美人がそこにはいた。
「………ちょっと、なんとか言いなさいよ……」
「……すみません。見惚れてました」
まさか自分がラブコメ主人公の十八番であるくっさいセリフを吐かせられるとは。
黒一色のロングワンピースに、絹のように艶のあるストレートロング。まさに清楚の権化である。
お団子ヘアにバイトの制服の彼女しか知らなかった俺にとってはとんでもない衝撃だ。
「お、お世辞はいいから早く行くわよ!」
「お世辞じゃないんですけど……何処行くんですか?」
「今日は私の服を見に行くわよ!」
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ディナーの時間帯に入ってきたので、駅のすぐ近くにある寿司屋に2人で入った。回らないやつである。
2人席に座って一息つく。
……ガチの荷物持ちだったな。俺に気があるのかもしれない(キリッ)なんて痛い勘違いしていた俺をぶん殴りたい。
流石財閥の娘といった所か、とんでもない量の服を購入していたのだが、それらを全て俺に持たせてきた。今に至るまでの約5時間と少しの間ずっと。
側から見れば完全に召使いである。
……いや、まあ、栄美子さんの色んなコーデを見れただけでも十分なんだけど、正直なんかなぁ……と思ってしまった。
「………健人、ごめんね。今日、つまんなかったよね」
いきなり顔を俯かせて謝罪してきた栄美子さん。
「……急にしおらしくなってどうしたんですか?」
「いつも召使いに持たせてたから、つい癖で……」
……マジもんのお嬢様だな……リアルで召使いがいるのかよ。
「……嫌いになった……よね………ぐすっ………」
……いやまじか。泣き出すことでもなかろうて。
「どうしちゃったんですか。急に泣き出して」
ポケットから取り出した未使用のハンカチを使い、彼女の涙を優しく拭う。
「……貴女に見損なわれるのが不安なの。貴方に失望されるのが怖いの。……貴方の事が大好きだから」
……高級寿司店で告白されるなんて、誰が予想出来たのだろうか。
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あとがき
なんか栄美子の告白の言葉、ヤンデレ麻紀の言葉と同じ波動を感じますね(笑)
昨日寝る前になんとなくこの物語の終わりが見えました!が、後輩救済がマジで至難……
後輩は作者にとっても地雷だなぁ……(笑)
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