俺は魔法使いにはなれない。
「今日の午前中、美容院に行くために駅前まで行った時、健人とあの女狐が手を繋ぎながらイチャイチャしてるのを見ちゃったの」
……見られてたのか。
「その時は本当に女狐にムカついて、健人から引き離そうと近づいたの。……でもその時、ふと私はもう捨てられたんじゃないかって思った」
「……さっきも言ったけど捨てる捨てないって話じゃないだろ?……俺と麻紀は幼馴染っていう強い繋がりがあるんだ。麻紀がそれを断ち切ろうとしなければ、一生切れる物ではないと俺は思ってる」
「……ありがとう。……でも、言葉だけじゃ安心出来ないの。不安なの。捨てられたんじゃないかって思った瞬間、動悸がしてきて、目がチカチカして、胸が苦しくて。……自分でもこんなにも健人に依存してるって思ってなかったけど、貴方がいないと私って生きていけないんだなって思った」
「……」
「……だから、あの女が邪魔だった。頭に完全に血が上ってた私は、あの女を殺そうって…」
「……麻紀はそんな事する子じゃない」
「私もそう思ってた。……けど、健人の事になると止まれないの。止まらないの。自分が自分じゃなくなったみたいで………怖い」
麻紀は病むほど俺を愛してくれている。それは男冥利に尽きるけど、彼女が苦しんでいるのを見ると素直に喜べない。
「……ごめんな。少なくとも俺が麻紀の本質を見誤って無かったらこんな事になってないよな」
麻紀に罵倒されていた時、それが彼女の本性なんだと勘違いしなければ。
彼女に話を聞いていれば。
何か変わったのかもしれないな。
……でも、それでも。
俺は後悔していない。
彼女の口から光を貶すような言葉を聞いた時、自分の中から彼女への愛がスッと消えていくのを感じた。
俺を罵倒するのは良かったんだ。俺も好きだったから耐えられた。……けど、家族を貶されるのは本当に許せなかったんだ。
でも、それが引き金になって麻紀が病んでしまったならば、俺にも責任がある。
「なら……悪いと思ってるなら……私を捨てないって証をちょうだい」
「……証?」
疑問に思っている最中、突然麻紀が抱きついてきた。
「お、おい!いきなりどう─「抱いて?」」
「………は?」
「私を……抱いて?」
理解が追いつかない。脈略が無さすぎる。
「……冗談でもそんな事言うなよ」
「冗談じゃないよ。……私の初めてを貰って?そうしたら、心の優しい健人は私の事を捨てるなんて出来ないでしょ?」
虚ろな目をして俺を捲し立てる麻紀。少なくとも冗談ではないらしい。
「…………無理だ」
付き合っていた頃なら大歓迎だった。でも、今の俺は光や麻里亜会長から告白されている。確かに付き合ってこそないが、ここで麻紀と肉体関係を持ってしまうのは彼女達の思いを踏みにじる事になる。
「………そっか、やっぱり健人はもう私なんかいらないよね。そうだよね……じゃあ、私、死ぬから」
途端、ナイフを自分の首に当てた麻紀。
「やめろ!」
咄嗟に腕を掴んだのは良いものの、彼女の首筋からは血液が滴った。
「私、本気だから。健人が抱いてくれないなら死ぬ。貴方に愛されない世界になんて意味は無いもの」
「……脅しだぞ、それ」
「わかってるよ。汚い女だね、私」
「……避妊具も持ってないんだぞ」
「生でいいよ。私ピル飲んでるから」
「……場所はどうするんだよ」
「ここでいいじゃん。絶対見つからないよ」
「……………………」
「………もう脅しなんて馬鹿な真似、するなよ」
俺は勢いよく彼女の唇を奪った。
ふと、光と麻里亜先輩の顔が頭に思い浮かんだ。が、振り払うように舌を絡ませる。
その日、俺と麻紀は公園で一つになった。
==================================
あとがき
無事テスト終わりましたー。
まじでお待たせして申し訳ございません。
西太后許せん!
皆さん、少し聞きたいんですけど、小説でも近親相姦はタブーだと思いますか?
是非ともコメントで教えてもらえれば嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます