ヤンデレ転生進化
「その女と早く離れて?」
麻紀の一切籠らない、虚ろな目をして俺に問いかける。
どうしてか居た堪れなくなり、目を逸らすと──
「なんてもん持ってんだよ……」
「なにって……ナイフだけど?」
さも当然と言わんばかりに顔をかしげる麻紀。
何か尖った物を持っているのは分かっていたが、ナイフだなんて予想がつく訳も無い。
ぎょっとして無意識に後ずさる。
「……ねえ、健人。その女とどういう関係なの?」
「何ってそれは──「お前には聞いてない」
佐里姉ちゃんが口を開くと、麻紀が殺意を載せたような釣り上がった目で佐里姉ちゃんを睨んだ。
佐里姉ちゃんもすっかり萎縮してしまったらしく、身を縮こませて俺の背中に引っ込んでしまった。
何故自分が浮気を妻から問い詰められる旦那のようになっているのか分からないが、取り敢えず正直に話す事にした。
「ただのいとこだよ……」
「嘘だ!」
いや、本当なんだけどな……。
「ただのいとこが手なんか繋いでイチャイチャする事なんてない!」
どうやら昨日に二人で家へ向かう所を見られていたようだ。
……まあ確かにただのいとこが手繋ぐなんて事は珍しいよな。
「……確かに手は繋いだが、別にイチャイチャしてないぞ」
あくまで正直に話す。
「嘘だ嘘だ嘘だ!どうせ好き合ってるんでしょ!私よりその女を選んだんでしょ!」
「……一体どうしたんだよ。少しおかしいぞ」
麻紀はそもそもこんなに聞き分けのない子だったか?
確かに俺を押し倒した前科もあるので、彼女が暴走しがちなのはわかっているが、なんとも違和感を拭えない。
……どこか焦っているような。
「そうやって私の事をあっさり捨てるんでしょ!私はこんなにも健人が好きなのに!」
「……捨てるも何もない。第一、幼馴染の麻紀を蔑ろにするわけないだろ?」
「嘘つき。今だって私よりその女との時間を優先してるじゃん!………………………………………そっか、その女に誑かされちゃったんだよね……なら──」
──その女、消したら解決するよね。
「佐里姉ちゃん!逃げろ!」
直後、ほぼ無意識に俺は叫んでいた。
そして佐里姉ちゃんへと駆け出そうとしている麻紀を後ろから押さえ込む。
佐里姉ちゃんも命の危険を感じたようで、文句も言わずに逃げだしていった。
「どいて!じゃないとあの女殺せない!」
「落ち着け!落ち着いてくれ!」
俺の懇願も虚しく、麻紀は拘束を解こうと暴れている。
……なんとかして落ち着かせないと。
殺意は佐理姉ちゃんのみに向いているようで、俺に刃を向ける様子は無いが、万が一拘束を解かれたら佐里姉ちゃんが危ない。
ええい!こうなったら実力行使だ!
俺は自分の口を麻紀の耳へ持ってきて──
──パクッと。
「ひゃ!や、やめ……ひゃぁぁぁぁ……」
麻紀は耳が弱い事はとっくの昔から知っている!
事実、良い感じに聞いているぞ!
ラストスパート!舐めまくってやる!
「や、やめぇ……ひゃ!や、ふにやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
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「落ち着いたか?」
「う、うん……」
顔を真っ赤にして俯く麻紀。随分と喘いでたので、恥ずかしがっているようだ。
と、その前に佐里姉ちゃんに連絡連絡。
警察でも呼ばれたら大変だからな。
「俺一人でなんとか解決出来そうなので、家で待っていてください」
よし、これで大丈夫だろう。
再度、俺は麻紀に向き直る。
「麻紀、どうしてこんな事したんだ?刃物まで持ち出して」
「ごめんなさい………少し気が動転してた」
「あぁ、麻紀が正気じゃないのはわかってた。もっと詳しく教えてくれないか」
しばらくの沈黙後、麻紀はポツリと話し始めた。
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すっげぇうざいタイミングで話を終わらせる悪徳小説家の鑑。
追記
近況ノートにも書いたのですが、テスト期間に入るので更新遅れます!ごめんなさい!
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