健人の好み


携帯と睨めっこしてもう30分は経ったけど、中々勇気が湧いてこない。


「お話したいのですが今暇ですか?……はちょっと硬すぎるよね……」


折角打った文章を消去ボタンを長押しして消していく。


「今暇?ちょっと話そうよ……は逆に柔らかすぎるかなぁ。軽い女だって思われたくないしなぁ……」


もう一度、消去ボタンを長押しして消していく。


さっきからこの繰り返し。


中々上手く彼に切り出すための良い言葉が出てこない。


……変な文章打って嫌われたらどうしよう。


そう考えるだけで、一度は送信しようと動いた手が止まってしまう。


悶々………


ピロン!と通知音が鳴った。


「ひゃぁ!」


睨めっこしていた画面には新規の文章が追加されていた。


「前回うちに来た時ハンカチ忘れていきましたよね?次会う時持っていきますね」


彼にメッセージを送ってもらうだけで飛び跳ねる程嬉しくなってしまう。


恋って本当に凄い。


……早く返事しなきゃ。


「ありがとう。洗濯とかしなくて大丈夫だからね」


送信っと……


即座に既読が付いた。彼は私の返事が来るまで待っていてくれたのだろう。


つまり今の数十秒、彼は私の物だった。


そう考えるだけで脳でドバドバと快楽物質が分泌されて惚けてしまう。


あぁ、幸せ。


ピロン!


すぐに我に帰ってトーク画面を確認すると──


「分かりました。では次の月曜日に」


……え?なんか会話を終わらせようとする強い意思を感じるんだけど……


「やだ!やだ!」


玩具を買ってもらえずに地団駄を踏む子供のように私はベッドで暴れ回った。


折角学校以外でお話出来る数少ないチャンス。絶対に活かしてみせる!


でもどうしよう……なんて打とう……


……いや、ここは積極的に行くべきだよね!


「健人ってどんな女の子が好みなの?」


やば……よく見たら話題を変えるのが強引過ぎてもっと話してたいことバレバレじゃん!


「恥ずかしいよぉ……」


自分で打ったくせに、顔が真っ赤になっているのが分かった。


「……」


まだかな……


返信が遅いなと感じ、もう一度トーク画面を開く。


「まだ既読になってない……」


彼はもう携帯をいじるのをやめてしまったのではないか。


もう私とは話したくないんじゃないか。


不安が止めどなく溢れてくる。


「あっ!」


既読ついた!



「女子の好みですか……」


歯切れ悪いわね!男ならバーンと言っちゃいなさい!


彼と話ができて舞い上がっているからか、謎にハイテンションになってきた。


「強いていうならば……優しい人ですかね。ありきたりですけど」


メモメモ


「髪型とかは?」


「髪型はボブです!」


……嘘……私……ロング……彼の好み……ボブ……


明日美容院行こ。


「じゃあ体型は?」


「体型は……痩せても太ってもない感じですかね?……って急に俺の好みなんて聞いてどうしたんですか?」


……わかってるくせに。そんなの、そんなの──


「君の理想の女性になりたいからに決まってるじゃん……」


……この後の会話はお互いにぎこちなかったという。


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あとがき


更新遅れて申し訳ございません!


理由としては、ここ最近ずっと熱が続いております

(コロナじゃないと信じたい)


かく言う今も37度4分です。


でも、これも全て言い訳です!本当に申し訳ないです!


今回の話は熱がある事もあり、少し短めになってしまいました。申し訳ございません。頭があまり回ってないので、少しおかしい部分があると思います。よろしければ教えてください。


そういえば今回の話主語が出てきてないんですよね。誰かわかりましたか?まあ多分わかっちゃうと思います

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