光の暴走
麻里亜先輩から告白された後、素知らぬ顔をして生徒会室に入ってきた悠里先輩を含める生徒会メンバー全員で仕事を片付けた。
仕事中、こちらをチラチラ見てくる麻里亜先輩を俺が見つめ返して、麻里亜先輩が顔を真っ赤にして目を逸らす、という一連の流れが繰り返されていた。
前の俺ならば「麻里亜先輩は俺に伝えたいことがあるらしい」なんてふざけた勘違いをしていただろうが、告白された今では、麻里亜の心情が手に取るようにわかってしまう。
──好きな人が気になって仕方がない──
それを理解した俺も冷静でいられる訳は無く、気恥ずかしさに苛まれてまともに仕事に手がつかなかった。
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「ただいまー」
今日も本当に濃い1日だったな……
「お帰り!お兄ちゃん!大好き!」
「……」
まさか麻里亜先輩に告白されるとはなぁ……
「ねえ」
光のドスの効いた声で我に帰った。
「なんで無視するの?」
「あ、あぁ悪い。ぼーっとしてた」
「嘘だ……無視したんでしょ。麻紀ちゃんと仲直りできたから、もう私の事なんてどうでも良いって思ってるんでしょ!」
「ご、誤解だ。大切な妹をどうでも良いなんて思う訳ないだろ?」
突然ヒステリックを起こした光に困惑しながらも弁解する。
「そうだよね。所詮私は大切な妹だもんね……実妹より美人な幼馴染の方が良いに決まってるよね……そんなことわかってたよ……わかってたけど!」
俺の弁解はむしろ火に油を注ぐようなものだったようで、光は目尻いっぱいに涙を溜めたかと思ったら、走って部屋に戻ってしまった。
「いったいどうしたんだよ……」
元々光は思い込みが激しいきらいがあると感じてはいたが、ここまで暴走したのは今回が初めてだ。
俺は、光の変化に心底驚いて呆然としてしまった。
「少し時間を置いてみるか……」
時間を置けば少しは光も冷静になるだろう。
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「光、一旦部屋に入れてくれないか?」
時刻は8時過ぎ。
もうあれから2時間と少し経っている。
光はその間飯も食わずに部屋に篭っていて、俺が話しかけても無言を貫いている。
光の部屋にはしっかり鍵が付いているので、こうなったら俺は光に開けてもらうよう頼む事しかできない。
「一旦話し合おう。開けてくれないか?」
と再度呼びかけてみるものの、反応は見られない。
諦めて踵を返しかけたその時、
ガチャリ、と音が鳴った。
「お兄ちゃん……」
やっとの事部屋から出てきてくれた光は、目元を真っ赤に腫らしていた。
「リビング、行くか」
リビングに着いた俺と光は向かい合うように座った。
「……冷静になったか?」
「うん……」
「光、まず最初に言っておくが、俺が光をどうでもいいと思う事は後にも先にも無い」
「……ほんとに?」
不安げな表情で俺に聞いてくる光。
「当たり前だ……それと、さっきは無視したみたいになって悪かった。ちょっと今日は色々あって考え事してたんだ」
そう言って俺は頭を下げる。
「じゃあほんとに私が煩わしくて無視したわけじゃないの……?」
ダメ押しとばかりに再度聞いてきた光。
彼女にとって、俺に煩わしく思われるのは耐え難い事なのだろうと察する事ができた。
「あぁ、神に誓って」
神にまで誓ったので、流石に光も安心してくれるだろうと思った矢先。
「良かった……良かったよぉ……」
感極まったのかまた泣き出してしまった光。
だが、この涙は決して悲しみの篭った涙では無いのだろう。
「私……お兄ちゃんに捨てられたんじゃないかって……不安で不安で死にそうだった……一回不安になると、もう止まらなくて……お兄ちゃんは本当は妹に好かれるなんて嫌なんじゃないかとか……私みたいな重い女、嫌いなんじゃないかとか……考えたりした」
光の独白のような台詞は、実兄の俺を好きになってしまったが故の不安を顕著に表していた。
「光、俺が光を捨てる訳無いだろ?俺には出来すぎた妹だ。むしろ俺が捨てられる事の方が可能性高そうだな。……それに前も言ったが、俺は光を1人の女性として見ている……事もある。だから光に好かれて嫌だなんて思う訳がない」
俺が本音を光に伝えると、彼女の表情が幾分か晴れたような気がした。
「嬉しい……お兄ちゃんにそう言ってもらえるだけで心がポカポカする!……でも「事もある」って部分はちょっと不服だけどね」
そう言ってはにかんだ光。
彼女の機嫌が直ったようでなによりだ。
「あ!ちなみに今日色々あったって言ってたけど何があったの?」
「あぁ、実は今日告白されて─
「は?」
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あとがき
という訳で光回でした!
やっぱり主人公と一緒に住んでるだけあって光回が多くなっちゃいますね……
少しバランスが悪いので他のヒロイン回も次回以降からは入れたいと思います!乞うご期待!
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