第8話 師匠 【上】

「いやぁ、購買のパンは美味かった!」

「俺に感謝しろよ」


 常幸が開人の努力ズルの戦利品を流れていったであろう腹をポンポンと叩きながら満足そうに笑みを浮かべる。


「たまには購買の弁当も食べてみたいが、パンよりは高いからどうしてもパンにいっちまうんだよな」

「俺、一回だけ日替わり弁当食べたことあるぜ。結構好みが分かれそうな味だった。

俺は好きだな、あの時の日替わり」

「なら、俺も好きだな」


 常幸の弁当経験談から好みの話をする2人。

もともと食や趣味がかなり近い……いや、ほぼ同じな2人は片方が好きな味ならもう片方も好きな味と食べずに断定したり片方の趣味はもう片方に必ずシェアするなど一周回って親友の域を超えてる気もしなくはないが、この2人が変わってるだけだ。


 もとよりボッチ、人と距離をとりたがっていた開人に唯一介入してくることができたのが常幸だ。常幸はボッチなどではなく比較的周りに溶け込み友好関係を築くことのできる人物だ。

だが、開人は初めて会った時から気が合いそうだと思いしつこくしていくうちに開人の方から話すようになりここまで仲良くなった。だが、そんな仲のいい2人。その片側の常幸はとても気分が良い………いや、楽しみが出来た。

それは、開人に恋人が出来たことだ………仮ではあるが。

常幸はどちらかと言うとモテる方ではあるが、開人に恋人ができるまでは誰とも付き合わないと決めていた。そしてついにその開人に恋人ができた。それを聞いた時常幸は思ったのだ。


恋のキューピットいじり役になって手助けおもちゃにしよう」


………と。

 きっと開人のことだ。今まで経験のなかった故に付き合い方も下手であろう、ならば親友である自身が2人のキューピットになるしかないと。


「そうやさ。これとはどうなん?」


 小指をたて、左右に軽く振る。


「……お前、ぶつけた所は平気か?」

「おう。で、どうなん」


 誤魔化そうとするが、すぐに軌道修正され逃げることはできないと悟った。


「………昨日の今日で何かあるわけねえだろ」

「いやぁ、わからないぞ。付き合って1日目でやりにやりまくってるかもしれんだろ。ナニとは言わんが」

「漫画の読みすぎだ………」

「明日から土日で休みだろ、どっか出かけないのか?。お前部活入ってないから暇だろ」

「明日は師匠のところに出向くから無理だ」

「じゃあついでに連れてってやれよ。親みたいな人なんだから」

「………絶対か?」

「絶対だな」


しばらく考え込み、ペットボトルに入っていたお茶を一口飲んだ後常幸をみる。


「………わかった。連れてく」

「それでこそ男よ!」



(一緒に帰る約束をしに来たら………開くんの親に会うことになってるぅ〜!!)

 若干の勘違いを交えて、開人と華鈴は師匠こと解放極拳初代宗家当主 詩型玄地しけいげんじに会いに行くことになったのだった



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学校一の美少女にこんな俺が告白される筈がない 醤黎淹 @soysauce

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