第3話 お試し期間スタート

「………で、なんでお前が学校一の人気者。博華鈴さんと手を繋いで仲良く降りてきてるんだ?」

「………俺が聞きたい」


 開人と華鈴は………結局付き合うことになった。お試しだが。



「なるほどなぁ………とりあえず。俺は時谷常幸、こいつの親友だ。よろしく、彼女さん」

「か、彼女さんって言われちゃいました………えへへ。あ、えっと、博華鈴です。よろしくお願いします」

「………お前の彼女、めちゃくちゃ可愛いな」

「まだお試し期間だ………」


 空いてる手で頭を掻く。


「この後俺らゲーセンに行くけど、彼女さんはどうする?」

「あ、はい。一緒に行きます」

「………とりあえず手、離していいか?」

「えぇ!。しょ、しょんにゃ〜」


 露骨に残念そうに、目をウルウルさせる。


「いや………ほら、靴履くから」

「履いたらまた手を繋いでくれますか?」

「え?。あぁ〜………」


 助けてくれと、常幸に視線を送るが、諦めろと首を横に振られる。


「………いいよ」

「はい!」


 これまた露骨に元気になる。


(………小動物みたいだな)



【ゲームセンター】


 ゲーセンに着き、なんのゲームをするかとウロウロしていると華鈴が「このゲームをやってみたいです!」と、指差すのはいわゆるガン・シューティングゲーム。しかも、ガンコントローラーが筐体の可動マウントに直付けされているタイプだ。


 更には、華鈴が指差しているゲームは大量のゾンビが襲ってくるホラータイプの物だ。


「………それ、本当にやるのか?」

「はい!。やってみたいです!」


 開人の問いかけに即答してくる。


「………お前の彼女、勇ましいな」

「さっきまで小動物みたいで可愛いって思ってた」

「俺もだ」


 まぁ、せっかくなので2Pでやることに。

 1Pが開人、2Pが華鈴になる。実際開人はかなりゲームが得意………というより、その気になれば大体のことはできる。

ただ、目立ちたくなかったり、興味がなかったりで雑になるだけだ。


 そんな中、華鈴はどれだけゲームが上手いかと、ちょっと気になっていた2人だが始まってみればまぁ酷い。


 ゾンビにビビりにビビり、テンパリすぎて銃を撃つことさえ忘れるほどだ。

 この様子から考えるにゲームはまったくやったことないし、ホラーは苦手なのがわかる。


「ひゃああああああ!!」

「ちょ!腕掴まれたら狙いがズレ………」

「死んだな」


 華鈴に右腕に抱きつかれ、狙いが定まらず2人してゲームオーバー。


「あわわ。ご、ごめんなさい………」


 露骨に(以下略)。今にも泣きそうなほど。


「あ〜………ま、まぁ。向いてなかっただけだってゲームは他にも色々あるからな?。そうだよな、開人」

「あ、あぁ。博さん、音ゲーとかやろっか」

「………華鈴って呼んでくれないんですか?」

((………可愛いなおい))


 正直、開人も博さん呼びは変とは思っているが、下の名前で呼ぶには正直抵抗があった。

 お試しとはいえ、仮にも付き合っているから下の名前で呼んだ方がいいと思うが、どうも恥ずかしい。


「おい、呼んでやれよ。彼女だろ」

「おま!わかってて言ってるだろ」

「もち」


 華鈴には聞こえないようにコソコソと話している2人。華鈴はキョトンとしている。


「………わかったよ。………か、華鈴。これでいいか?」

「は、はい!。えへへへ」

(なんか………いや、きっと別れるんだ。こころを奪われたらいかん!)

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