夜の走馬灯(バケットのハムチーズサンドと季節限定カフェオレ)
夜、ベッドの中で今日一日の事を思い出す。
歯磨き粉がなくなりかけていたこと。
昨日の帰りに買い忘れてしまって、握力の全てをつぎ込んで手がしびれたこと。
満員電車で知らない人に足を踏まれたけれど、「すみません」と私が謝り、無視されたこと。(めちゃくちゃ痛かったし、無視された恥ずかしさもあって、ほんの少し、少しだけ、一瞬だけ猛烈に呪った)
それから、お昼にコンビニでバケットのハムチーズサンドと季節限定のカフェオレを買って食べたこと。それがすごく美味しかった。
でも、食べながら見た3階からの景色があまりにも中途半端で「わたしは今どこにいるんだろう」だなんて、本当はわかっているのに、わかっていない風な気持ちになって、……いや、でも実際はやっぱりわかっていないのかな、どっちなんだろうと、更にわからなくなった。
夜というのは今日という日の走馬灯に、ついつい感傷的な「何か」をくっつけたくなってしまう。
そして、誰でもない「誰か」に語りかけるようにわたしは眠りにつくのだ。
今日は君のことを今この時まで思い出さなかったよ。
ひどい?
でもね、わざとそうしたかったんだよ。
君がいなくても大丈夫なわたしになりたいって思うことがあってね。
変かな。
面倒かな。
まぁ、君からしたらそうかもしれないね。
けれど、わたしはそうやって思いの「天秤」を調整していないと不安になってしまうから。
重すぎるとネジがゆるんで軋んで、その内わたしのせいで壊れてしまうんじゃないかって。
……こんな事を考えてしまう時点で失敗だね。
まぶたが重くなる。
この瞬間に君に語りかけられる幸せ。
わたしは今日も君が好きでした。
おやすみなさい。
毛布は暖かくて、優しくて、誰でもない「誰か」の君をわたしに許してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。