珍兵器歓談(リアル編)・YB-40とDo-200(2)

 ところが、ネットで見かけた話では、そんなYB-40が意外な活躍をしたことがあったというのです。イタリアに鹵獲されたP-38が米軍機を装って落伍したB-17を撃墜しており、それを知った爆撃機乗りが放置されていたYB-40でB-17に随伴し、落伍機を装って逆にイタリアのP-38をおびき寄せて撃墜した、という事でした。

 ですがそれを読んだ時、既視感があったのです。それというのも、かつて父が買った酣燈社「爆撃機W.W.II」の中に、良く似たストーリーが乗っていたのです。「B-17 まぼろしの爆撃機」というタイトルですが、敵役が、ドイツの鹵獲したB-17である以外は、よく似た展開でした。


 しかしこれほど似ているストーリーがあるとなると、どちらも事実であるとは考えにくくなりました。どちらかが事実で、どちらかがそれを基にしたフィクションなのか。それともどちらもフィクションで、一方がもう一方を焼き直したものなのか。


 少し検索したのですが、少なくともP-38との話はマーチン・ケイデンの「B-17」と「P-38」に載っていたようです。

 その中では、P-38のパイロットは不時着水で生存。YB-40のクルーは彼を射撃しようとしたが、機長はそれを止めた。その機長は後にベルリン空輸中の事故で死亡し、P-38のパイロットは彼の死を悼んだ、というエピソードだといいます。


 アメリカのBBSで、この件についてのスレッドがあったのですが、回答者はこのエピソードについて、フェイクだったと書いていました。ベルリン空輸の死者のリストに、この機長ハロルド・フィッシャー中尉の名はないとのことです。

 世界の傑作機30号P-38でも、イタリアに鹵獲された機体は少なくとも一機のB-17を撃墜したが、その後燃料が合わず飛行不能となったとあります。またそのパイロットは、ケイデンの伝えるロッシ中尉ではなくトンディ少尉だそうです。

 となると、こちらのエピソードは創作の可能性が高いでしょう。では、「まぼろしの爆撃機」の方はどうでしょうか。

(続きます)

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