V作戦の主役たち・ガンタンク(2)

 ガンタンクの方が61式戦車より優れている機能とは何か。


 一つには、砲の仰角が大きく取れる事です。

 なにしろザクはジャンプします。ガウやコムサイからの空挺運用も珍しくありません。

 戦車が苦手とする上面からの攻撃を受ける一方、砲塔上部に装備した機関銃ではザクには無力で、主砲では相手が地上に降りるまで反撃は難しい、ということになります。

 対空戦車の20ミリから30ミリ機銃でも恐らく通用しないでしょう。誘導ミサイルはミノフスキー環境下では使えないし、有線ミサイルも射程外でしょう。


 例によって余談ですが、ハインラインの「宇宙の戦士」におけるパワードスーツの基本戦術は、奇数番号と偶数番号に分かれてのロケットによるジャンプ、通称「カエル跳び」です。

 小学生の時、この本にまず出会い、ヤマトの記事目当てで買ったメージュでこのパワードスーツのような名前のロボットが出てくるアニメが始まることを知って見始めたのがガンダムでした。

 閑話休題。


 ガンタンクの主砲は、61式戦車よりはるかに大きな仰角が取れます。速射自動砲であり、相当な発射速度(砲を飛び出したときの弾の速度=初速ではなく、次の弾を発射するまでの間隔のことです)を持っています。


 そこで連想したのが、イタリアはオットーメララ社の対空車両OTOMATICです。

 艦載用76.2mm自動速射砲をベースにした対空戦車。無茶と言えば無茶な車両で、採用した国は(イタリアを含め)ありませんでした。興味がおありの方は、ググってみてください^^;

 ガンタンクは、これに近いように思います。

 戦車というより、硬い空挺兵としてのザクや巨砲搭載の対戦車ヘリともいえるマゼラトップ(マゼラアタック)に対抗する対空自走機関砲という解釈です。


 長砲身の120mm自動砲で、降下中あるいはジャンプ中のザクの短砲身120mmのザクマシンガンをアウトレンジし、撃破する。

 一方のボップミサイルも、対空ガトリング式ロケット砲として、初速が劣る分を炸薬量と発射速度で補い、空中のザクにダメージを与える。

 頭部コクピットが脚周りと自動砲を制御し、腹部コクピットが左右ボップミサイルをするように役割を分担すれば、ある程度は複数の敵に攻撃できる訳で。

 こういうコンセプトなら納得が行きます。


 しかし対空戦車としてなら、車高は高くても、上空から見た面積が小さいガンタンクの車体は合理的。キャタピラを上方からの攻撃からカバーするフェンダーカバーが無いのは弁護できませんが。

 61式戦車など既存の地上部隊を補完する役割をガンタンクが果たし、戦車などが上に降りたザクに対応するとすれば、防衛戦では一定の役割が果たせるでしょう。

 それは、単体では本格MSであるザクには対抗できないガンタンクの、もっとも相応しい在り様ではないでしょうか。


 ちなみにかなり昔にこの稿をまとめた後で、陸上自衛隊の87式自走高射機関砲が隊員から『ガンタンク』と愛称を奉られているという話を知りまして、とても嬉しかったのは内緒ですw

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