第50.5話 設定資料:この世界の魔法について【おまけ】【先行公開ここまで】
【初めに】
第二章、先行公開分はここまでになります。
ギャンブルシステムの穴を把握した上で、八百長による引き分けに全ツッパして、村人から金を巻き上げておいて、村人に豪華な資本の再分配と水車小屋の小麦粉の宣伝を同時にキメる莨谷村長の異世界攻略RTAが光る一本でしたね。トンチキクッキングバトルに見せかけた割と真面目なギャンブル回でした。
この先は、ドワーフの村に行きながら最終決戦の布石を打ちつつ、伯爵との決着をつける展開になるので楽しみに待っていてください。作者の入院治療が一段落する十一月の後半には先行公開分のリライトも含めて、第二章を最後までの公開する予定です。
ここでは、おまけとして異世界麻薬王世界の魔法システムについて説明したいと思います。なお、この部分は読まなくても話を楽しむ上で何ら問題はありません。それでは解説始まり始まり。
【魔法】
ソード・ワールドでは真語魔法と操霊術と言われたり、ドラクエで魔法使いと言われたり、FFで黒魔術と言われるあれです。この世界の魔法は、この世界全体に存在する
ですが、これは野蛮な異世界人どもの勘違いです。実際は
続いて、エーテリウムの性質も紹介します。エーテリウムは通常、静止質量がほとんどゼロで、正負いずれかの電荷を持つ粒子として振る舞います。有名な作品だとガンダムで言うミノフスキー粒子に近い性質を持っています。この世界の魔法使いというのは、このエーテリウムを体内の各臓器(個人差・種族差あり)に貯蔵し、その扱いに長けた人間のことを言います。
ハーフリングはエーテリウムの貯蔵能力がほぼゼロ、また人間も比較的低めなので、辺境伯はドワーフやエルフを捕まえてエーテリウムの生体貯蔵庫にしていました。死んでくれてよかったよね辺境伯。
この世界の魔術師はだいたい魔法の触媒を持っています。この触媒が、人族の思念をエーテリウムに伝え、エーテリウムの振る舞いを担い手に与えるアンテナの代わりをやってくれます。ガンダムで言うところのサイコミュです。中には触媒を組み込んだ武器を扱う魔術師も居て、自らの思念で大砲やマスケット銃を華麗に操りながら
詠唱は古代語が基本ですが、エーテリウムの分布把握・引き起こしたい事象のイメージ・エーテリウムを動かす為のエネルギー・十分な集中力が揃っていればかなり自由にアレンジできます。魔法学校で教わる詠唱は真面目だった頃のサンジェルマンが体系化した「覚えれば誰でも使える詠唱」です。ちょっと真面目にかじった奴なら自分好みにアレンジできます。たとえば暗殺者のヌイちゃんは無詠唱が基本で、隠密行動用の出力が低い(感知されにくい)魔法だけを使って、ダメージは物理で稼いでいます。
【忍術】
ニンジャは居ないけど忍術はある。
ヌイちゃんやヌイちゃんパパママは砂漠の民と呼ばれる人間の中でも有名な戦闘民族です。満州アヘンスクワッドという漫画におけるモンゴル民族、SW2.0におけるシャドウ、清く正しく人間の優秀な戦士として軍や傭兵団の偉い人をやっています。
そんな彼らが厳しい砂漠の土地で編み出した魔術が忍術、厳しい環境に耐え忍ぶ為の術です。自分の身体能力や過酷な環境下での生存に特化した魔法で、短時間&低消費で使えるのが特徴です。これは多分本編だとちゃんと出てくるのがだいぶ先になると思うのでこぼれ話程度に思ってください。
【幻獣操術】
魔法で操っている奴と生態を理解した上で手懐けているやつがいます。前者は機械的な動きになりがちで、後者は暴走されるリスクがあります。前者は軍が、後者は傭兵や非戦闘員が好んで使う傾向があります。ハーフリングは魔法の適正が無い分だけ幻獣の扱いが得意です。幻獣の定義はエーテリウムが使えるかどうかです。人と幻獣の違いは実は曖昧です。人格を得た精霊はエルフからは人、人間からは幻獣として扱われます。アヤヒちゃんが人間の町で精霊とのハーフエルフだとバレるとヤバいです。
【治療魔法】
無論、異世界人がそんな面倒なことを一々理解している訳もなく、女神レン様の恵みであることをぼんやりと認識しているに過ぎません。高位の
なお、レン様以外にも、かつては神が居ました。長い宇宙の旅を終えて倒れてしまった神々が、今でもまれにこの世界の人間と繋がることで医療用ナノマシンの操作権限を移譲することがあります。この治療魔法が得意なのは第二章終盤から第三章で活躍する新キャラの聖女様と「斬魔機皇ケイオスハウル」の主人公です。どっちも神様と仲が良い。直感的に神様を喜ばせて力を引き出す選択をとれるんですよね。
治療魔法という名称も実は間違っていて、別に治療以外にも雨乞いとか予知とかエネルギー弾の発射とか色々なことができます。本質は神と呼ばれる知性体との交信にあります。日本語が喋れることと、会話が得意なことが別であるように、素質がある場合は訓練量で発揮できる力は変わってきます。
莨谷先生の持っているスキルは本来ならこれに近いのですが、もう女神にも制御できない変な進化を始めている上、先生自身の気質の問題でどちらかというと最後に紹介する錬金術に近いものになっています。
【精霊魔法】
精霊魔法を使っている人族がやっていることは「エーテリウムに干渉する機能を持つ存在(精霊)にお願いしているだけ」です。アヤヒちゃんの詠唱とか見ると分かりやすいですね。出力や応用範囲はかなり血統に左右されます。普通の魔法や治療魔法は練習でかなり変わりますが、精霊魔法はごまかしが効きません。アヤヒちゃんは素質の無い莨谷先生にも見えるほど大量かつ多様な精霊を呼び出しています。
基本的に人間以外の種族が得意としています。これは人間が文明に頼り切りで自然と一緒に生きていない舐めた連中が多いからです。治療魔法も同じ理由で使える人間が減っています。神を崇めない愚かな人間が増えているからです。女神が積極的に人間を滅ぼしたがる理由にも繋がっています。
【錬金術】
これだけ毛色が違います。転移者のサンジェルマンが魔法の体系化を成立させた段階で、この世界の魔術に合わせて構築した「未発見原子エーテリウムの存在を前提とした現代科学」です。ここらへんきっちり理解できているのが王都にある魔法学校のエリートと非人間種族も大胆に取り入れている大手傭兵団の研究部門くらいなので、一般市民からすると「いまいちわかんねえ~」って認識です。
莨谷先生の「魔法という事象を現代科学の視点で把握する」「現代科学の産物を魔法的に説明する」は限りなく錬金術師に近いです。なので錬金術を正しく理解できている人間から見ると莨谷先生は「辺境にめちゃくちゃ腕の良い錬金術師が現れた」になるわけです。
エルフ共はクソバカなので、マジでその貴重性を理解しているのはアヤヒちゃんだけで、その戦略的価値を理解しているのはアッサムさんだけです。両方理解しているのはサンジェルマン伯爵のみで、それ故に第二章ではあんなに素早く彼に接触している訳ですね。
【先生と女神の魔法への考え方】
さて、ここまで散々「異世界人は魔法の理屈分かってないアホ」と話しましたが、別にアホは異世界人だけじゃありません。なんと莨谷先生も魔法を理解していません。異世界人だけ馬鹿にするのはアンフェアだと思いませんか? 俺は思います。誰しも平等にアホなところはあります。莨谷先生は生前、担当教官から「お前センス無いよw」って煽られているだけあって、魔法の存在は活用するくせにエーテリウムの存在を未だに理解できていないのです。しかし「理解できていないことを理解できている」ので魔法絡みは女神に頼っています。女神様様です。
女神は魔法についてろくすっぽ説明しませんが、もちろん彼女は何でも使えますし、設計時点で魔法についての知識はあります。しかし説明をしないので理解を得られないし、彼女の存在を知覚できる者もきっちり話し合ってくれる相手も限られています。先生みたいなパートナーがちょうど必要だった訳です。相思相愛です。愛って素敵だよな。
【最後に】
以上で魔法とそれを取り巻くキャラについての設定資料を終わります。普段はこっちでクトゥルー神話の解説ばっかりしているのですが、
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124
自作ファンタジー作品の設定解説をするというのも中々楽しかったですね。そのうち、この世界の民族についてもどこかのおまけで出していくつもりなので楽しみにしていてください。また、魔法の設定や民族の設定について質問があったら応援コメントなどで聞いてくださると嬉しいです。
第二章はまだまだ三分の一、これからが面白いところとなっています。今後とも応援よろしくお願いいたします。
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