第4話 いーから開けてー
林はタクシーに放り込まれ去っていった。
「林くん、優香ちゃんのこと好きって言ってたね」
スタッフのサナちゃんが林が倒したグラスを片付けながら言った。
「…どこがいいんだか。顔だけじゃん」
ボソボソ言った。
ん?今なんつった?
ぽちぽちぽち、はい転送
マイク持って私は前へ立った。
「くるりの東京…」
誰かが呟いた。
熱唱。
一人は泣き、一人は茫然とし、一人は一緒に歌い出した。
「優香ちゃん、相変わらずヘッタクソだな」
誰かが呟いて笑った。
アホみたいに飲んで、なんだかよくわからない間にシナシナになった花束を引き摺って家に帰ったのは朝の6時だった。
頭痛ぇ
売れたかった。
林の言葉がずしーんと頭に響く。おお痛い。
ベッドに倒れ込み泥のように眠った。
ピンポンピンポーン
なんだよ。
眠い目を擦りながらドアフォンを見ると
「しゃしゃ社長!なんで?」
「お前電話も出ないしメッセージ送っても無視するし。心配したんだぞー。いーから開けてー」
時計を見ると夜の8時過ぎだった。うぉ12時間以上寝てしまった。
社長のいーから開けてーがあまりに自然だったものだからうっかり開けてしまった。
「おまっ酒くさっ!おじゃましまーす。お、結構綺麗にしてるな。送別会でもやってたのか?」
社長はズカズカ部屋に入ってきて床にどすんと座りコンビニの袋からコーヒーを2本出して1本を私に投げてきた。
ごくごく
おおお胃に染みる。
「急に来て悪かったな。返事聞きたくて。どう?愛人やる?」
「え…でも私社長の事よく知らないし。急にそんなこと言われても」
「じゃぁなんでも聞いて。答えるから」
「…なんでもって…あ、結婚してるの?やっぱ不倫はよくないと思うんだけど…」
「結婚はしてない。安心しろ。他は?」
「そうなんだ。愛人って言うからてっきり…社長何歳?」
「43歳、射手座、B型」
「うーわかったよ。もういいよ」
「もういいの?もっと俺に興味持ってよーハハハ」
社長の笑い声と胃に染み入るコーヒーが心地良くて
「愛人やる。やってやんよ」
口走ってしまった。
社長が右手を出してきたので私達はかたく握手をした。
「フハハ随分勇ましいね。それは良かった。よろしくね。そうだな、じゃぁマンション借りてやるからここ引っ越す準備しとけ。これ当面の生活費。また近いうちに連絡するから。あ、お前鏡見た?化粧落としてから寝たほうがいいぞ。じゃーなー」
そういうとテーブルの上に札束の入った封筒をポンと置いて社長は帰っていった。
封筒を握りしめて洗面所に行って鏡を見て絶叫した。メイクはドロドロに落ち目の下はマスカラで真っ黒、髪はボサボサ。酷い。社長、あなたどんな趣味してるの?
さて私はこれからどうなるのでしょう?
運命の歯車は動き出した。
第5話早く!!
愛人28号 pampi @Lula
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