残機=1

精神は、精神はとっくに瀕死だった。

僕が、僕の不用意な言葉が、瀕死の彼を殺して。罪悪感で弱った僕に彼女がトドメをさした。

その時の僕は血を流しながらもまだ死ぬわけにはいかないと一ヶ月もの間身体を這いずり自らの血を啜ってどうにかこうにか生き永らえていたのだが、つい先日、新しく生まれた僕が惨めに生にしがみつくかつての己に引導を渡した。


晴れ晴れしい気分だった。今までの荷物は過去の僕がそのまま地獄へ連れ去った。

身体が、心が、それこそ浮いてしまえそうなほど軽かった。

こんなに息がしやすいのはいつぶりだろう。なんだ、こんなことなら、最初から僕を殺して仕舞えばよかった!


ズキズキとアタマが痛む。過去の僕が亡霊となって付き纏う。過去の罪を忘れるな、僕は君で君は僕だ、僕の罪は君の罪だと指を指す。

妄念を振りほどくように、追及から逃れるように頭を振り、目と耳を塞いだ。

大丈夫、この、新しく生まれたこの僕は間違わない。同じ罪はもう二度と犯さない。今度こそ、僕は最初から、君と違う世界で生きて、そしてもう足を踏み入れるようなことはしない。


顔を上げる。光が網膜に突き刺さる。さあ、再出発の準備は整った。

不思議と見覚えのある景色に背を向け、僕は人生最初の一歩を踏み出した。

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