ビーフシチュー

なんだか夕食を全くつくる気になれず、それでもお腹は空いていたから、前から気になっていた***という洋食店に行った。

某レビューサイトでは無愛想な御主人とされていたが、ありがとうございましたとは言ってくれるし、不必要に話しかけてくることがないぶん僕としては気が楽であった。

メニューは6点ほどあり、中くらいの値段のビーフシチューを頼んだ。


恥ずかしながら、ビーフシチューというと、レトルトの、ルーの味の濃いタイプのものしか想像していなかったし、ルーが味の決め手、勝負所だろうと思っていた。

しかし出てきたものは非常に色が薄く、スープが少ない。もしかして失敗だったかと思っておっかなびっくりスープを口にしたところ、しっかりと味はするのである。

おそらくこれは牛の自然のうま味、というものだろう。では、と思ってスープに浮かぶ丸いにんじんを口に運んだときまた驚いた。とても、甘い。鮮やかな見た目同様、パッと星が瞬くような鮮烈な甘さ。かといって決してくどくはなく、スープの味にも馴染んでいるのである。にんじんだけでなく、半球の島のようなじゃがいももしっかり食感は残っているにも関わらずホロホロと口で蕩ける。間違いない、僕は生まれて初めて、ルーではなく具で勝負したビーフシチューに出会った。

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