第7話 パーティーの誘い
エシスからの手紙に嬉しく思いながら、手紙を出す。
ーファリル陛下、いいがお過ごしでしょうか。先日は大変失礼な事をしてしまい、申し訳ありません。本日、ヘリサナ様とお話をして自分の中で何かが吹っ切れました。ですので明後日パーティーを開催をしたいと思っています。ご都合がよろしければご参加下さい。
追伸 今ずっとファリル陛下と呼んでいるけど、ファリルと呼んでも良いだろうか?ー
手紙を読み終えたファリルは声を出さずに頷いている。
「陛下?」
「エシス〜!なんていい子なんだろう!」
「保護者か!早くお返事の手紙を書いてください」
「そうだね!」
ファリルは急いで手紙を書く。
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早急に手紙を仕上げたエシスはぐったりする。
「お疲れのようですね。少しお休み致しましょう」
ハーマントはお茶を入れ、エシスに渡す。
「ありがとう。助かるよ」
エシスは紅茶を貰う。
「良い香りだな。なんの茶葉を使ってるのだ?」
「そちらはアールグレイという茶葉を使っております。疲れた時にはとてもいいのです」
「そうなのか」
エシスは紅茶を一口飲む。一息ついていると高速伝達鳩が手紙を持ってくる。
「もう届いたのか?」
「どちら様にお手紙をお書きしたのですか?」
「ファリルだ」
エシスは手紙を貰うと、鳩を返す。手紙を読み始めるエシス。手紙にはこう記されていた。
ーエシス様、お手紙読ませて頂きました。パーティーのことですがご参加させていただきます。当日、楽しみに致しています。
追伸 そんなの、ずっと前から良いって言ってるだろ?ー
「どうでしたか?」
「参加してくれるそうだ!明後日パーティーを開くぞ!これで安心できる」
「良かったですね!早速準備致します」
「頼んだぞ。俺は少し眠る」
フラフラしながらエシスはベットに倒れ込む。
「仕事の方は?」
「もう終わった」
枕に顔を埋め込んでいるため、篭った声をしている。ハーマントは書類に目を通す。
「本当に終わっていたんですね。お疲れ様です」
ハーマントは書類を固めて部屋を出る。部屋の外でバタバタしている臣下達に終わり次第、それぞれの場所に帰っていいと伝える。
ハーマントは書類を片付けて久しぶりに実家に帰る。
「ただいま」
玄関に向かって一言放つ。しかし、返事を返す者はいない。父親も母親もこの世にもう居ないのだから。兄も居るが、彼女を連れて家を出ている。今考えると、もう誰も住んでいない家と化している。
「おかえりハーマント。早かったな」
ひょっこりと顔を見せる左目を眼帯した男。ハーマントの兄であるマルト。
「兄貴!なんで居るの?」
「なんだよ。帰ってきちゃいけないのかよ」
「そういうつもりじゃないよ」
「たまには兄弟水入らずにさ。飯作ったんだ。食うだろう?」
マルトは皿を用意する。
「彼女さんは?」
ハーマントは周りを見る。いるのは兄貴だけである。
「あいつなら、殺されたよ。エルサナ国の連中に」
マルトは布巾を強く握る。
「殺されたって…」
「エルサナ国の連中は、お姫様の政略結婚を破棄されたことに腹が立って、他国の者と結婚した者を次々に殺していったらしい。あいつもその一人で殺されちまった。俺は慌てて逃げたよ。もう戻らないって言ったのにな」
マルトは悲しそうな顔をする。
「兄貴…」
「お前の顔でも見れば元気になれると思ったんだけどな。ダメみたいだ。それより、この国変わったな。王宮に居る臣下達が仕事を終わって帰ってきてやがる」
「前の国王がお亡くなりになり、エシス様が国王になったからだよ」
「お前が面倒見てたあの王子さんが?いい国王だな。少しの間だけ俺はこの国に居るよ。構わないよな」
「なぜ俺が文句を言わないといけないのだ。ここは俺たちの家だろ?」
ハーマントは笑顔を作る。その笑顔にマルトも笑顔になる。二人はその夜、昔話をした。たくさん、たくさん楽しい話を。
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