第4話 愛とは

 抱きしめられた身体は心臓の音がうるさく響く。


「エシス、なんでずっと来てくれなかったんだよ。俺、嫌われてるのかと思うだろ?」


 かなり悲しんでいる様子。


「あと、俺、破棄した」


「はあ?!どういうことですか?!」


「なんで、他人行儀なの?俺とは敬語で話すなって昔に言っただろう?もしかして、誰かにそうしろと言われたのか?」


 雰囲気が怖くなり、空気ががらりと変わる。


「そんなの俺が許さない!」


 何かに怒っている様子であり突然接吻される。エシスは突然のことでファリルの舌を受け入れる。絡まる両者の唾液に押し返す力が出ない。人からの愛とはこんなに強烈なのだろうか。エシスの舌が逃げようとすると、逃がさないとばかりに吸われて甘噛みをされる。そのしぐさに身体が跳ね上がる。いつやらかファリルのキスを自分から強請っている。


「そうやって、知らない男を誘っていたのか?」


 口が離れると、ファリルは怒りながら聞いてくる。しかし、トロトロに溶けているエシスに聞く耳が無い。もっと欲しいと言わんばかりに口を開けるが、来るのは左耳責め。左耳が弱いエシスは舐められただけで、腰を浮かせる。

 身体全身で感じるエシス。好きだった相手に抱かれていると考えると、全てがどうでもよくなる。エシスはレイプじみた抱かれ方をした。


--------------------


 ファリルが我に返ると、服が滅茶苦茶になったエシスが居る。


「エシス、すまない!大丈夫か?」


 頬に手を触れようとする。だが、それをエシスは拒む。


「気は済んだみたいだな」


 冷たく当たるエシスに、ファリルは驚く。エシスは腫れた目を擦り、身だしなみを整える。


「エシス…!待ってくれ」


 エシスはファリルの言葉を気に留めず、早足で扉の前に行く。


「こんなことになるなら、始めから来るではなかった。今後一切、この俺に話しかけるな…!」


 エシスは泣きそうな顔でそういい、部屋を出る。

 ファリルは怒りと自分の犯した過ちに腹が立って、壁に頭をたたきつける。


「くそっ!」


--------------------


 ヘリサナに足止めされている彼らの元にエシスが帰ってくる。


「帰るぞ」


 エシスはそういい、帰りを急ぐ。二人はその後を追いかける。

 ヘリサナはエシスの目が腫れていることが分かる。部屋に向かうと、頭を抱え賢者タイムをしているファリルがいる。


「陛下、エシス様に失礼なことをしましたね」


 ヘリサナは怖い顔をしてファリルを見る。


「明日、貿易としてラビリンス国に行くので、そこで謝っておきます。それまで当分の間部屋から出ない、そしてエシス様にお手紙も会いに行くのもお話に行くのも彼にお許しが出るまで禁止にします。それでは」

 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る