第2話 国王

 国王が亡くなったと聞き、エシスは国王の部屋へ向かう。中に入ると、静かに眠っている父親の姿。周りは悲しみのあまり泣き崩れている。


「父上」


「国王様、まさか亡くなられるとは…」


 エシスは静かに父親に近づき、頬に触れる。


「父上、お勤めご苦労様でした。後のことは、この俺に任せてくれ」


 悲しみを表に出さないように、唇を噛んで抑える。


「明日、この俺、エシスの国王就任式を執り行う。今日中に陛下の葬儀を執り行う。急げ!過去はもう変えられない!」


 彼らは早急に取り掛かる。国王の葬式、明日の式のために。


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次の日の朝、国王就任式が行われた。


「新国王、エシス様に、鷹の王冠を」


この王冠は代々国王に受け継がれる貴重な物。王冠と言われるが、形からしてはティアラに近い。

エシスの頭に王冠が乗ると、国民は大歓声。


「エシス国王!万歳!」


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式も終わり、次々に大臣たちがやってくる。


「エシス様、国王就任おめでとうございます」


「お前たち、これからの仕事はわかってるな?」


「左様でございます」


「お前たちがいないと俺は弱いからな。フォローして貰うぞ」


「はい、陛下」


ゾロゾロと彼らは戻って行く。

あとからは各国の国王が挨拶にやってくる。ただし、ある国の国王を除いて。


「陛下、宜しかったんですか?あの者に伝えなくて」


「いいんだ。あいつとは会いたくないんだ」


そう、彼だけ。フロウブレン国国王、ファリル。エシス、彼の初恋相手だ。


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ーフロウブレン国ー


「陛下、たった今入った情報によりますと、ラビリンス国国王ラリルス国王がお亡くなりになられたようです」


 そう伝えるのは、この国の騎士団団長を務める国王の妹、ヘリサナ。彼女が伝える。


「そうか、次の国王は、エシスか?」


「左様でございます」


「就任式はいつごろだ?」


「それが…」


「いいにくい話じゃないだろう?」


「それが、陛下は除かれていたようで、もう終わってしまったようです」


 意外なことで、ファリルは体勢が崩れる。


「それは、本当か?」


「事実です。陛下、何かしたんですか?」


 ヘリサナは汚い物を見るように、彼を見る。


「俺の気づいていないところで、なにかしてしまったのだろうか?」

 

頭を抱えるファリルにヘリサナはある提案をする。


「ならばお手紙をお書きになられたらよろしくて?それで帰ってこなかったら、私自身が赴きましょう」


「頼んだぞ」


 ファリルは自室に戻り、手紙を書き始める。それを配達鳥に任せて飛ばす。うまく届くことを祈って。


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「陛下、お手紙が届いております」


「手紙?誰だ?」


「ファリル様です。相当落ち込んでいる様子です」


 エシスはその手紙を読む。内容は初めに就任に対してのお祝いの言葉がつづられている。次にはパーティーのおしらせがある。どうしても話したいことがあると書いてある。


「どうします?断りますか?」


「新国王として、一番の貿易国の国王と会わないのは失礼だしな。少しだけ会うだけだろう。参加すると答えといてくれ」


「かしこまりました」


  ハーマントは一礼をして部屋を出る。あの男から手紙にエシスは頭を抱えた。


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