第2話 国王
国王が亡くなったと聞き、エシスは国王の部屋へ向かう。中に入ると、静かに眠っている父親の姿。周りは悲しみのあまり泣き崩れている。
「父上」
「国王様、まさか亡くなられるとは…」
エシスは静かに父親に近づき、頬に触れる。
「父上、お勤めご苦労様でした。後のことは、この俺に任せてくれ」
悲しみを表に出さないように、唇を噛んで抑える。
「明日、この俺、エシスの国王就任式を執り行う。今日中に陛下の葬儀を執り行う。急げ!過去はもう変えられない!」
彼らは早急に取り掛かる。国王の葬式、明日の式のために。
--------------------
次の日の朝、国王就任式が行われた。
「新国王、エシス様に、鷹の王冠を」
この王冠は代々国王に受け継がれる貴重な物。王冠と言われるが、形からしてはティアラに近い。
エシスの頭に王冠が乗ると、国民は大歓声。
「エシス国王!万歳!」
--------------------
式も終わり、次々に大臣たちがやってくる。
「エシス様、国王就任おめでとうございます」
「お前たち、これからの仕事はわかってるな?」
「左様でございます」
「お前たちがいないと俺は弱いからな。フォローして貰うぞ」
「はい、陛下」
ゾロゾロと彼らは戻って行く。
あとからは各国の国王が挨拶にやってくる。ただし、ある国の国王を除いて。
「陛下、宜しかったんですか?あの者に伝えなくて」
「いいんだ。あいつとは会いたくないんだ」
そう、彼だけ。フロウブレン国国王、ファリル。エシス、彼の初恋相手だ。
--------------------
ーフロウブレン国ー
「陛下、たった今入った情報によりますと、ラビリンス国国王ラリルス国王がお亡くなりになられたようです」
そう伝えるのは、この国の騎士団団長を務める国王の妹、ヘリサナ。彼女が伝える。
「そうか、次の国王は、エシスか?」
「左様でございます」
「就任式はいつごろだ?」
「それが…」
「いいにくい話じゃないだろう?」
「それが、陛下は除かれていたようで、もう終わってしまったようです」
意外なことで、ファリルは体勢が崩れる。
「それは、本当か?」
「事実です。陛下、何かしたんですか?」
ヘリサナは汚い物を見るように、彼を見る。
「俺の気づいていないところで、なにかしてしまったのだろうか?」
頭を抱えるファリルにヘリサナはある提案をする。
「ならばお手紙をお書きになられたらよろしくて?それで帰ってこなかったら、私自身が赴きましょう」
「頼んだぞ」
ファリルは自室に戻り、手紙を書き始める。それを配達鳥に任せて飛ばす。うまく届くことを祈って。
--------------------
「陛下、お手紙が届いております」
「手紙?誰だ?」
「ファリル様です。相当落ち込んでいる様子です」
エシスはその手紙を読む。内容は初めに就任に対してのお祝いの言葉がつづられている。次にはパーティーのおしらせがある。どうしても話したいことがあると書いてある。
「どうします?断りますか?」
「新国王として、一番の貿易国の国王と会わないのは失礼だしな。少しだけ会うだけだろう。参加すると答えといてくれ」
「かしこまりました」
ハーマントは一礼をして部屋を出る。あの男から手紙にエシスは頭を抱えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます