ムチとあめ

「弦強く弾きすぎなんですよ。痛い。」

「はいはい。分かりました。」

「あと、時々聞こえて来る独り言あれやめて下さい。少しだけ気持ち悪いです。」

「待ってそれは今じゃ無くていいんじゃ。てか聞いてるのかい。」

何だか浩介の醜態晒しになって来た。隣で紅乃はケラケラ笑う。

「黙ってて下さい。あと意味もなく抱きついてこないで。気色悪い。ああ嫌思い出しただけで殴りたくなる。」

「何か暴露大会になって来たぞ。地獄絵。もうやめて。」

「飛んだくそ主人だね」

面白いからつい参加してしまった。

「私の主人がまともでよかった。」

紅乃はそう笑っていた。だか、ここまで完膚なきまでに言われたので浩介は赤点とった勢いで凹んでいた。

「ふう言えた。まあそんぐらいですかね。まあ根だけはいい人ですから、救いようがあります。何か合奏するんでしょう。弾いて下さい。」

「弾けるかこんなボロカス言われたら。誰でもそうなるわ。」

自暴自棄になっている。

しょうがないから。誠優さんに、何とか言って頼み込む。

「え…嫌です。絶対しません。」

「そこを頼みます。」

「仕方ないですね。」

そう言って浩介のところに行く。

「さっきは言いすぎました。勿論良いとこもありますよ。運指が丁寧とか。」

「そうかいそりゃどうも。」

「技術が沢山あるとか。」

「どうせくそ主人ですよ。」

「そんなとこは素敵ですよ。」

「え、今なんて言った。」

「だから素敵です。」

大いに喜んでいる。どうやら機嫌は直ったらしい。いやチョロ過ぎる。

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