第24話

「そろそろ消灯の時間だ。部屋の電気は消せ。ベッドのライトは点けてていい。」

「うん…。」

「疲れただろ。何度も倒れて、あれだけ泣いて。」


 う…ん?私、見られてたの?泣いてる姿…。


「もしかして…ずっと見てたの…?」

「バカ言うな。」


 司はグーの手で私の頭をこつんとした。


「俺はそんな暇じゃねーし、そんな半端なこともしねぇよ。」


 私は怪しく思ったのだろうか。眉間にしわを寄せ、口をへの字にした。そのへの字の唇に、司の唇が重なる。


「俺はいつだって本気だって言っただろ。」


 え…今……。


「これでわかったか?」


 今、キスした?


「おい、聞いてるか?おーい。」


 また頭をこつんとされた。


「こっち向け、真琴。」


 強い声、心を叩く声をたどる。司が見えた。真剣な顔の司が。


「もう寝ろ。明日のために。お前自身のために。」


 こんな時にも、司の言葉が私の心を貫いた。


「おやすみ、真琴。また明日な。」


 優しい笑顔が立ち上がる。


「待って。」

「ん?どうかしたか?」


 どうしてこんなこと言ったんだろう。


「まだ居て、ここに。少しでいいから。」


 やっぱりバカな私。バカで単純と思われても仕方ない発言。仕方ないけど、居て欲しかった。優しい笑顔が去っていくのを、見たくないと思った。


「ごめん…忙しいよね。ごめん…。」


 私は恥ずかしさを、少し笑って誤魔化す。そんな私に、司は頭をぽんぽんとした。


「居るよ、いつでも。いつまででも。」


 この時私は何を思ったのか、自分でもわからなかった。翌日気付くことになることも。


「ありがと…。おやすみ…司…。」

「おやすみ、真琴。」

「…おやすみ……。」


 私はいつの間にか目を閉じていた。手に感じるぬくもり。あたたかい、手のぬくもり。


 そこまでは、覚えていた。

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