第20話

「だいじょーぶ。そんな保護者みたいなことしなくても。」

「俺は保護者じゃねーよ。」

「あ、先生でした。ごめんなさい、せんせ。」

「先生でもねーなぁ。」

「?じゃあ何?」


 司はまた私を見つめる。さっきより強い目。さっきよりドキッとした。司に、『男』を感じた。


「俺はお前が好きだ。」


 違う。そういう意味じゃない。違う。


「ずっと見てきた。だから待つ、お前のこと。決めた。」


 『決めた』…。だから違う。違うってば。


「それ…本気…?じゃない…よね…?」

「俺はいつだって本気だ。昨日あのままお前に犯されとけばよかった。」

「あ…れは…。」

「冗談だよ。」


 司は笑う。司の本気と冗談…。境界線が…わからない…。


 やっぱり司は、不思議な人…。


 違う。それで終わらせちゃいけない。私も強く、司を見る。


「ねえ。私のことからかってるの?哀れだと思って漬け込んで、弄ぼうとしてる?それなら私は一切受け付けない。拒否する。」

「真琴。」

「何?どうなの?」

「誰が哀れだって言った?」

「だって、そうとしか思えない。」

「同じこと何度も言わせるな。」

「それじゃ答えに、なってない…。」


 動揺してる、私。誰だってこんな状況、動揺する。そう言い聞かせる。


「真琴。」

「…なに…?」

「お前は、自分が思っているほど強くはない。強かったら今お前はここにいない。わかるだろ?」


 体の力が少し抜ける。言葉が見つからない。わかることは、司の言う通りだってこと。


「心配かけんな。」


 聞くのが二度目の言葉。一度目、あんなに深く聞こえたのは、私のことを、全部を、司は知っていたから。一度目の時と同じ、切ない顔の司。


 司の気持ちが、少し見えた気がした。

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