第19話

「お前ら目当ての客、いっぱいいたな。コアなファンが沢山いた。そんなバンドはそうあるもんじゃない。かっこよかったよ、お前らが断トツにな。」


 第三者に改めて、ストレートに語られるのは初めてだった。昔話だけど、胸が熱くなる。


「あのボーカル。歌とギターはもちろんだけど、あの声がいいよな。尖ってはいないのに力強くて、少し甘い声。」


 私も、好きだった。大好きだった。


「お前も。」

「え?」

「お前の声も、すげー好きだ。」


 どうしてそんなに、さらさらと綺麗な言葉が出てくるの?


「あ…。」

「なんでコーラスだけだったんだよ。もったいねぇ。お前のソロの曲も出せばよかったのに。一度でいいから聴いてみたかった。」


 そんなこと、思ってた人もいたんだ。


 他にも色んな意見や希望、あったのかな。それを汲み取ることができてたら、何か変わってたかな。でもそれに、気付くこともできなかったんだ。


 5年間、活動していたって。バンドとして形になれたのは、つい最近のことだった。ただがむしゃらに、やりたい曲作って、出したい音出して。弾いて歌った。


 SNSやら何やら使ってはいたけど結局、駆使できてなかったんじゃん。発するだけ発して。受けることを、しているつもりでできていなかったんだ。


 私達は、自分達で精一杯だった。


 未熟のままに終わった。未熟だから終わったんだ。


「ケリ…つける。」

「ん?」

「私もちゃんとケリつける。そうじゃないと、後悔しそう。な、気が…する…。」

「頼りねーなぁ。俺も一緒に行ってやろうか?」


 やっぱり司は笑顔が似合う。

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