第10話

「まぶし…。」


 カーテンを開けると、フラッシュバックかと思うほどの強い光。やがて目が慣れてくる。昨日は雨が痛かったけど、今日は陽射しが痛い。


 レースカーテンと窓ガラス越しに見えたもの。干してある、私の黒いワンピース。私はベランダに出た。


 ひらひら揺れるワンピース。気持ち良さそうだった。ごめんね昨日、あんな目に遇わせて。


 ワンピースに近寄ると、いい匂いがした。バスタオルと同じ、いい匂い。


「洗濯、してくれたんだ。」


 すぐ横に、不自然な形に干してあるバスタオル。それを捲ると私の下着が干してあった。下着をバスタオルで隠し、干してあった。


「どこまでマメな男…。」


 マメなのか、極度な世話好きか。やっぱり不思議な男だ。ころころ変わる男の表情が、ひとつひとつ頭に浮かんだ。


 いい匂いに囲まれて、私は思う。男のこと。雨に濡れてかわいそうなギターを持ち帰り、気を失いかけた私を救い、服を洗濯して、私に色んな表情をくれた。


 まるで私を守る、天使みたい。神様っているのかな。私のことを哀れだと思った神様は、天使を私に派遣させた、とか?


「何考えてんだろ、私。」


 どこかの神話みたいなこと考えてる余裕は私にはない。天使でも誰でも何でも、甘える訳にはいかない。これからは、一人で生きていかなきゃいけない。一人で歩いていかなくちゃ。


「早く出よ…。」


 ワンピースと下着を手に取り、私は部屋に入った。

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