第14話 一緒にすんなよ!
「全く! 今日は集合時間が早くて大変だったわよぉ」
そう言ったピンフォール・アキラの顔にはばっちりメークが
「また来たんか!」
多魔世は毒づいた。
「なあによぉ。うれしいくせにぃ」
アキラはウィンクで返した。
「ふん!」
多魔世は
「おはようございます。七代3曹、遅くなってごめんなさいね」
アキラは頭を下げた。
「おはようございます。早朝から御足労いただきありがとうございます」
七代は敬礼で返した。
「また一人、生徒を連れて来ましたぁ」
アキラは
二位戸は軽くつんのめりながらアキラを
「おはよう」
無言で頭を下げた二位戸に対して、七代は滑舌よく、大きな声で返した。
「……ございます」
「覇気がないわね? そんな事では戦場で生き残れないわよ!」
「……」
「七代3曹、おいおい鍛えてやってくださいねぇ」
「分かりました。それじゃあ、君、着替えてきて」
七代は更衣室を指差した。
「あなたもよ!」
油断していた多魔世にも指示が飛んだ。
「……はい」
多魔世は渋々、二位戸の後ろを付いていき、更衣室の所で女子部屋に入った。
脱衣棚には昨日と同じ様にウェットスーツと水中銃が用意されていた。
「はあぁっ……」
早朝には似つかわしくない大きな溜め息を吐き、多魔世は我ながら驚いた。
いつまでこんな事を続けるんだろ? 母ちゃんは訓練の中身を知った上で承諾したのだろうか? 転入生の二位戸は何故、選ばれたのだろうか? 疑問と不安だけが募るばかりだった。
ウェットスーツに着替え、水中銃を抱えて更衣室を出ると、同時に二位戸武も出てきた。
「何だよ! お前のその格好」
二位戸はビキニパンツ一丁で立っていた。
「これしか置いてなかった……」
二位戸は気恥ずかしそうに体をくねらせた。
「武器は?」
「これ」
二位戸は両手をピストルの形にして差し出した。
「輪ゴムじゃねえか? それもカラフルな」
「これしか置いてなかった……」
「嘘だろ! ド変態じゃねえか」
「……」
「何よぉ、武! その格好ぉ」
アキラが二人のやり取りに入ってきた。
「着替えろと言うから、そうしただけだ」
二位戸は両手の人差し指でビキニパンツを指さした。
「それ、アタシのじゃない!」
アキラは二位戸の前でしゃがみ、しげしげとビキニパンツを見た。二位戸は視線に堪えきれず、少し内股になっていた。
「何で、あんたのパンツが更衣室にあんのよ!」
多魔世は二位戸の股間を指しながら怒鳴った。
「何よぉ! 昨日、帰りにちょっと、シャワー借りて帰っただけじゃないのよぉ」
「どーしてパンツが置いてあるんだよ!」
「あぁー……。
アキラはアゴに人差し指を当てながら小首を
「可愛くないわ!」
「痛っ!」
脇から二位戸がアキラの顔面に輪ゴムを飛ばしていた。
「何すんのよぉ!」
アキラが右目で輪ゴムをキャッチしたまま怒鳴った。
「この輪ゴムもあんたのか?」
二位戸が珍しく声を張った。
「よくわかったわねぇ」
アキラは右目の輪ゴムを指でつまみ上げて微笑んだ。
「何のゴムだ?」
「
アキラは二位戸の左手の輪ゴムも取り上げ、髪を後ろでまとめた。
「何にも可愛くないわ!」
多魔世があっかんべーをした。
「わあ、怖っ!」
「そもそも、何で二位戸を連れて来たのよ?」
「あんたが寂しそうだったからよぉ」
「だったら家に帰してよ!」
「ダメよ、まだ1日しか経ってないのにぃ」
「何日だったらいいのよ!」
「日数の問題じゃないわよぉ! 結果が全てよぉ!」
「どうすればいいのよ!」
「怪物を倒すのよぉ!」
「二位戸には何させんのよー!」
「ハッキングに決まってんじゃないのよぉー!」
「ハッキング?」
「そうよぉー」
「どういうことよ!」
多魔世は二位戸に視線をやった。
二位戸は下を向いた。
「この子はねえ、小学生の時にA国の国防総省にハッキングしたのよぉ。それで、現在、保護観察中なのぉ」
「だから戦場に送られるのかよ!」
「更生教育の一環よぉ」
「じゃあ、あたしは何なのよ!」
「あなたは……」
「何よ!」
「……上の指示よ」
アキラは消え入りそうな声で答えた。
「上、て誰よ?」
「文部科学省の副大臣よぉ」
「副大臣!?」
「そうよぉ」
「そんなお偉いさんが何であたしを指名するのよ!」
「知らないわよぉ」
「あたしはハッカーじゃないわよ!」
「ハッカーじゃないわねぇ」
「誰かと間違えてるんじゃないの!」
「それはないわよぉ、ご指名なんだからぁ」
「副大臣のかよ!」
「そうよぉ」
「副大臣って誰だよ?」
「
「何だって!」
「あ!」
「最初の親父じゃねえかよ!」
「……」
アキラはうっかり機密事項を漏らしてしまった。
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