第13話 ニート、お前もか?

 急いで掻き込んだためか、朝食は食べた気がしなかった。

 多魔世はトレーを下膳口に戻した後、大盛加代に挨拶をし、ダッシュで少年特殊作戦群訓練センター『ホタテ』に向かった。


 4月とは言え、北海道の春風は冷たく、さっきまでの眠気も吹き飛んだ。ウォーミングアップを兼ねて小走りでホタテのエントランスに飛び込んだ。

「早かったな」

 七代は既に1階の海上訓練場で待っていた。言葉使いも段々、厳しくなっていた。

「はい」

 多魔世は軽く、息を整えた。

「それじゃあ、早速、訓練を始める」

「……はい」

「何だ?」

「いいえ」

「言ってみろ」

「7時からやらなきゃならないのかなあ、て……」

「実戦訓練だと言ったろ?」

「……はい」

「アイツは夜の間は海底にひそんでいるが、明け方から海面に上昇してくるんだ」

「アイツ、ですか?……」

「そうだ。昨日、話した地球外生物だ」

「ホントにあたし、そいつと闘うんですね?」

「ああ」

「鉢野前さんもソイツと闘った事、あるんですか?」

「ある」

「鉢野前さんでも倒せなかったんですか?」

「そうだ」

「そんな化け物相手に何故、私が選ばれたんですか?」

「君のようなものでなければダメなのだ」

「どー言う意味ですか?!」

 多魔世はここに来て初めて七代をにらんだ。

「ヤツは人喰い生物なんだが、何故か成人しか襲わないんだ」

「え!! 人喰い?」

 多魔世は少しだけ尿漏れした。

「そうだ」

「行きたくないです!」

 りきんだせいか、更に少し漏れた。

「それはできない」

「どうしてですか?」

「国策だからだ」

「コクサク?」

「国が決めた事だ」

「国?」

「そうだ」

「あたしを宇宙の化け物と闘わせる事を国が決めたんですか?」

「お前だけじゃない。少年の戦士が必要なんだ」

「おっはー!」

 緊迫した空気を切り裂くようにだみ声が背中から聞こえて来た。

 振り向くとピンフォール・アキラが立っていた。その横には不貞腐ふてくされた態度の二位戸にいとたけしの姿があった。

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