第8話 何で、そんな事まですんの?
少年特殊作戦群訓練センター『ホタテ』の中は空気がひんやり冷たかった。
防音設備が整っているのか訓練施設の癖に人の気配は感じられなかった。その分、身震いするような殺気だけは多魔世の全身を包み込んできた。
1階エントランスにフロアマップが掲出されていた。建物の内部は地下2階、地上4階構造だった。
特に1階と2階の表示に目が釘付けになった。
「何なのよ! 海上訓練場と白兵戦訓練場って?」
多魔世はアキラに強めの小声で訊いた。
「書いてある通りよぉ」
「中学生にあんな事させんの!」
多魔世はフロアマップの方に何度も指を差した。
「ただのプールと体育館よぉ」
「だったら、そう書くだろ!」
「バカねえ。施設
「時節柄みたいに言うな!」
「それじゃあ、着替えて、訓練を開始します」
二人のやり取りが済むのを待って、
「はあ……。何も持ってこなかったんすけど」
「大丈夫。こちらで用意しているから」
七代はキラキラした笑顔を見せた。
「はあ……」
多魔世とアキラは大人しく七代の後ろを付いていった。
「何で、あんたも付いて来るのよ!」
七代に促され、1階の更衣室に入るとウェットスーツが目に入った。
プールだからね。多魔世は心の中で自分を納得させた。
ワンピース型のそれを手にとって体に合わせてみたら、まあまあピッタリだった。
ふと、脱衣かごの脇を見ると水中銃が添えてあった。
「なんじゃ、こりゃあぁ!」
今度は自然に声が出た。
「戦闘訓練なんだから武器を使うに決まってるじゃない」
「あんた、どこまで付いて来んのよ!」
「ガキんちょの裸なんかに興味ないわよぉ」
アキラは鼻で
「こんなもん使って、誰と闘うのよ!」
多魔世は水中銃を顎で差した。
水中銃と言ってもフィッシング用のものではなく、戦闘用のアサルトライフルである。
元々、ロシアで開発されたものだが、多魔世の側にあるのはアメリカ製だった。
水の抵抗があるため水深20メートルの時に、対象物から10メートル以内で発射しなければ効果を発揮できない。銃弾は11センチの長さがあり、釘のようである。
「
七代は有無を言わせぬ態度を示し、会話を終わらせた。
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