第7話 逆に法に触れてない?
「随分、車庫が一杯あるんだね?」
多魔世が車窓の風景をぼんやり見ながら
「第7高射特科連隊て言う、戦車部隊があるからねぇ。その車庫だよぉ」
「ふーん」
「近くで見るとでけえな!」
「あなたのために
「あんたが言うな! 頼んでねえし!」
多魔世が怒鳴ったところで後部ドアが開いた。
「お疲れ様でした」
運転していた隊員が敬礼をして立っていた。
札幌ドームを一回り小さくした様な訓練センターの建物は通称「ホタテ」と呼ばれていた。
「あの裏にある塔は何だ?」
多魔世はセンター裏から覗く鉄塔を指した。
「パラシュート用の降下訓練塔よぉ」
アキラは当然の様に答えた。
「降下訓練?」
「そう」
「あたしには関係ないよね?」
「バカねえ。あるに決まってるじゃないのぉ」
「ふざけんな!」
「
「何で、そんな危ない真似しなきゃならないんだよ!」
「あんなのまだ序の口よぉ」
「何メートルあるんだよ!」
「高さ80メートルよぉ」
「80メートルって、中学生のやる訓練じゃねーだろ!」
多魔世はアキラに詰め寄った。
「大丈夫よぉ、安全面には最大の注意を払っているからぁ」
「最終的に戦場に送られるんだろ!」
「実習なんだから仕方ないでしょぉ」
「嘘つけ! 仕事だろ! いいのか、中学生にそんな危険な仕事させて! 訴えてやる!」
「単位と奨学金、もらえなくなるわよぉ」
アキラはぷいっとそっぽを向いた。
「おかしくね? 労働基準法違反じゃね?」
多魔世は釈然とせず、ブツブツ独り言をいい始めた。
「いいから早く、入りなさいよ! 中にぃ」
アキラが指差す先に隊員が立っていた。
アキラに初めて大声で怒鳴られ、驚いたのか、多魔世は渋々従った。
「へいへい」
多魔世は玄関前に立っている隊員へ敬礼をした。
「
歳の頃なら30前後の女性隊員が訊いてきた。
「あ、はい」
今まで出会った事の無い人種に出くわし、多魔世は軽く緊張した。
「
軽く170センチは超えているとわかる長身にモデルか女優でも出来そうな端整な顔が麗しかった。
「よろしく……お願いします……」
多魔世はしおらしく頭を下げた。
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