第2話 何故、こんな目に……

 朝の1時限目前から訳の分からない事を言われ、その日一日、多魔世は授業に集中出来なかった。

 もっとも、何も無くても授業に集中した事など今まで一度も無かったが。


 確かに学校は好きではないし、勉強も嫌いだ。他に行くところもないから暇潰ひまつぶしに来ているだけだ。


 金さえあれば遊びにでも行くところだが、家は母子家庭で貧乏だし、中学生じゃあ、バイトもできない。


 卒業後の進路も決まっていない。進学など考えられないし、だからと言って、働く意欲があるわけでもない。


 戦場に行け?

 自衛隊にでも入隊しろと言うことか?

 それも明日から。

 3年生になったばかりなのに……。

 あたしだけ?

 他にも進学できなさそうな奴いるけど……。


 昼休みの弁当も喉に通らず、あっと言う間に6時限目が終了した。

 チャイムが鳴り、6時限振りにガタイの良い長髪バッチリメイク野郎が現れた。

 帰りのホームルームの時間だ。


「1日、短かったわね!」

 誰に言うでもなく、アキラは声を張った。

「多魔世。放課後、ちょっと残ってね」

 クラス全体を見回してからアキラは最後に多魔世を見た。

「遅くなるって、家族に言ってないんだけど」

 多魔世はの家は、母子家庭だったが、母親の事を公式の場で『母』とか言うのは、かったるかった。ちなみに、小3の弟がいる。

「大丈夫。お母さんには了解取ってある。元々、お母さんからの依頼だからねえ」

「はあ!」

 衝撃だった。

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