第3話


「えっと…ごめんなさい!

私…結婚するならお父様達の様な夫婦になりたいんです。

責任感で結婚はしたくありませんし

貴方の事もよく知らないので、この件お断りさせて頂きます。

王子様もどうか今回の事は気になさらないで下さい。」


お母様とお父様はとても仲が良く

かといって私達を放ったらかしにはせず

お互いを愛するように私達にも沢山の愛を注いでくれている。

小さな頃からお母様達の様な夫婦になるのが夢だった。


「大丈夫だぞ!ティア!

もし婚期を逃しても僕が面倒見るからな!」


私を抱きしめ頬ずりするお兄様。


「…分かりました。

それではまず僕を知って貰う事から始めたいと思います。

改めて…僕はクリストファー・ランドルです。

また後日お茶のお誘いに来ます。」


そう言って去っていく王子様を罵倒するお兄様の声もそれを止めるお父様の声も右から左へ垂れ流しだ。


その名前を私は知っている。


王子の名を聞き、見覚えのある顔の正体も聞き覚えのある名前の正体もわかった。


彼は、私が一番やり込んだ乙女ゲーム『雪原の光』の攻略対象だ。

『雪原の光』はとても難易度が高い事で有名だった。

その理由は、選択肢のやり直しは聞かずセーブ等もない。

Endに到達するまで例え電源を切ってやり直そうとしても終わらない。

そして、攻略対象も1つでも選択肢を間違えれば即BADEND。

その為BADENDの数も多いが選択肢が多い為HAPPYENDも多い。

メイン攻略対象は、全部で5人。

だが、実はこのゲーム登場する名前付きの男性はある隠しキャラを除いて全員攻略出来る。

そして…私はどの攻略対象のどのルートでも悪役令嬢として登場し

最後は処刑。又は国外追放で野党に襲われ死亡。

どっちに転んでも死ぬ運命なのです。


これは…どう回避したらいいんでしょう…




お兄様達が居なくなった部屋でゲームの情報を思い出す。

ティアナ・スカーレットはクリストファー・ランドルに惚れ事故に見せかけ抱きつこうとした所王子がたまたま避け

怪我をしその怪我を理由に強引に婚約を迫る。

魔法学園でヒロインと出会ったクリストファーは、少しずつ彼女の魅力に惹かれ

それに気づいたティアナは、ヒロインをトコトンイジメ

最後は断罪イベントが待ち受ける。


攻略対象は、王子であるクリストファー

そして、多分もうすぐ来る義弟ニコラス

後は…確か学園で出会う筈…


「あー!記憶にもやがかかって思い出せないっ!」


確かニコラスは、お母様の妹の子供で

お母様の妹が亡くなり帰る場所が無くなったニコラスをお父様達が引き取ってくる。

闇の魔力を持ち煙たがられていたニコラスを

自分の居場所が無くなることを危惧したティアナがこれまたイジメ性格がネジ曲がり

無表情になり感情がなくなったロボットの様になったニコラスをヒロインが癒やしていく。

確か…BADENDは、ニコラスの幸せが気に食わないティアナがヒロインを雇った男達に襲わせそれを知ったニコラスが魔法でティアナと男達を消し、自分も自殺する。


「先ずは…王子との婚約回避…

その後ニコラスが来たら仲良くする…かな?」


王子と婚約しなければ、嫉妬もしないしヒロインを虐める理由がなくなる!

ニコラスも私がイジメなければ性格がねじ曲がることもなかったろうし…


「せめて、生きよう!」


目標、生存。




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