悪役令嬢は魔法を覚えたい。

第1話


怪我も治りうっすら傷跡は残ったものの

髪の毛を掻き分けて見ない限りは目立たない。


学園に戻される時お兄様は涙と鼻水でグチャグチャになりながら執事に引きずられて行った。


「えーと、魔法が上手くなるには精霊との対話が必要…?」


庭で木に持たれながらお父様の書庫から拝借した魔導書を見る。

もし、戦わねばならなくなった場合に備えて鍛えて損はない!


「えーと、私は確か水と雷…

ハッ!よし!着替えなきゃ!」


いい事を思いつき慌てて部屋に戻りある服に着替え庭の側にある湖に向かった。


「ちべたい…っ!!」


水着に着替え湖に飛び込んだけど

冷たくてピキッとかたまる。


「んー…でも此処からどうやって対話するのかしら?

話しかければいいの?」


水をすくいじーっと見ても変化はない。


「精霊さん、精霊さん。

私とお話しましょ?」


どこを見て話したらいいのか分からずすくいあげた水を見ながら話しかける。


『クスクスクス』


『あの子いい匂いするー!』


『前と違うねぇ!』


突然何処からか声が聞こえた。


「えっ!?」


『どうするどうする?』


『勝手に行くのは駄目だよー!』


『お尻ペンペンやだ!』


クスクス笑いながら話す謎の声


「えっと、精霊…さんですか?」


『そうだよー』


『でも姿を勝手に見せたら怒られるのー』


『貴方は何してるのー?』


「えっと、魔法を磨くには精霊さんとの対話と書いてあったので

取り敢えず水と話せばいいのかな、と思いまして…」


『クスクスクス』


『そんな事する人見たことなーい』


『あっ!皆しーっ!だよ!』


突然笑い声がやみ、静けさが訪れた。




「精霊達が騒がしいから来てみれば…

ふむ…確かにいい匂いじゃのぅ。」


突然声がし、声のする方を見れば先程まで誰も居なかったはずなのに

湖に足を入れ不敵に笑う男がいた。


あれ…なーんか見た事あるぞ…


青色の長い髪を三つ編みし両目の下には▼のマーク。

猫の目の様に黒目が細い。


「えっと…貴方は…誰ですか?」


「儂は、お主の名前が聞きたいのぅ」


「ティアナ・スカーレットと申します。」


格好が格好なだけに、立ち上がる事は出来ないけど

ペコリと頭だけ下げる。


「ほう…」


何かを考えてるのか湖から出て腕を組みながら私の方へ歩いてきた。


「えっ!?あ、あのっ!!」


私の後に腰を下ろしたかと思う首筋に顔を近づけクンクン匂いを嗅ぎ始める。


突然の事に恥ずかしさで顔が赤くなる。


「ティアナ、お主の匂いは儂らにとって媚薬の様じゃのぅ。ずっと嗅いでいたくなるのぅ。」


離れようとする私を抱き寄せ背中に彼の体温を感じる。


「えっ!?あ、わ、私家に帰らなくちゃ!

だ、だから離してください!」


前世でも男性経験等ない私には、男性に抱き締められるなんて難易度が高すぎます!!


「ティアナ、儂に名をつけよ。

そうすれば離してやろう」


「ひぁっ!?な、名前…ですか…?」


耳にふぅっと息を吹きかけられ変な声が出てしまった。


「そうじゃ。名じゃ。

お主は可愛いのぅ」


私の反応が面白かったのかまたふぅっと息を吹きかけられた。


「ひぁっ!わ、わかりましたから!息を吹きかけないで下さい!」


名前…名前…

考えていた時、ふっと1つの名前が頭に過ぎった


「…ヴェン…貴方の名前は…ヴェン。」


気づけばそう言っていた。


「ほう、中々いい名じゃ。」


私の頬にヴェンがキスした瞬間

キスされた場所が淡く光る。


「えっ!?」


「これで、儂らは結ばれた。

さて、ティアナの家は何処じゃ?」


戸惑ってアワアワする私を抱き上げ楽しそうにケラケラ笑うヴェン。


何がどうなってるの!?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る