第28話 答えは何処に
自分がしたことは、正しかったのか。
あの後一緒に帰宅して、楓華が家に入るのを見届けてから夕食や風呂を済ませた和樹は部屋のベッドの上で、自問自答を繰り返していた。
あの場での和樹の行動が正解か不正解かよりも、悩んだ末に自分が出した答えを正しかったと胸を張れるようにしていこう、なんていう考えが浮かんでは消え去り、見えない重力となって和樹を押さえつける。
『俺はそうは思わないけどな』
『こんな俺でよかったら、頼ってくれ』
今になって思い返してみれば、随分と柄でもない言葉の数々を言っていたことに気づき、羞恥のあまり枕に顔を埋めた。
状況が状況だっただけに、手を握ったり、頭を撫でたりと彼氏彼女かと言われても過言ではない程のスキンシップをしてしまった後悔が、和樹の脳内を「今すぐに消えてしまいたい」というネガティブな思考で埋めつくしていく。
(……この前までは)
『なぁ和樹、転校生の話なんだけどさ』
『興味無い』
『またまたぁ。見に行ってみたら分かるぞ。あれは可愛いとかの次元じゃないから』
『だから俺そういうのどうでもいい』
つい最近までそう思っていたのに、今日和樹は楓華に対してこう言ったのだ。
『その……うまく言えないけど、俺は好きだぞ、楓華のこと』
もちろん、その好きは人として好ましいの意味であり、一切の恋愛感情は含まれていない。
言い方が悪かったのだ。
それはきっと楓華も分かってくれているだろう。そのはずだ。
『えぁ……うぅ……』
よしよし大丈夫だなんの問題もない、と慌ただしい脳内を無理やり整理し、勢いに任せて寝てやろうとした時にふと脳裏に浮かんだのは、和樹の言葉に頬を染め、耳の先まで真っ赤に色づいていた楓華の姿。
(……あれは、急に俺が紛らわしいことを言ったからだ。きっとそうだ)
「……でも、仮に」
和樹は万が一を想像しようとして、やめた。その先は踏み込んではいけない、きっと後悔することになる、と見えない何かから訴えかけられている気がしたからだ。
『────なら、────大丈夫だよ』
すると、記憶の片隅にある鈍い痛みを伴う記憶がちらりと顔を出したが、和樹は全身に力を込めることでそれを引っ込める。
「後悔してもどうにもならないってのは、俺が1番よく知ってるっての」
鳴り続けるクラクションの騒音。
擦り
幼き頃の光景が、
それを振り払うように、毛布を勢いよく頭まで被って瞳を伏せた。
あれはもう乗り越えたじゃないか、と脳内にできた
『私、和樹くんに出会えて……本当によかったです』
伏せた瞼に映し出される楓華の表情に、和樹は髪を意味もなく掻き回した。
「あぁ……恥っず」
和樹はその後も、自分の発言を思い返しては羞恥に悶えることを、寝落ちするまでひたすら繰り返すのだった。
〘あとがき〙
どうも、室園ともえです。
今回は前回の反省会のような話でした。
初めて人前で弱音をこぼした楓華とそれを自分なりの方法で受け止めた和樹。
2人が今後どのように接していくのか、楽しみにしていただけると嬉しいです。
次回は楓華視点で話が始まります。
もしこの作品を「面白い」、「先が気になる」などと感じていただけた方は、気軽に応援や感想、フォローや星評価をしてくださると今後の励みになりますので、ぜひ。
次回は9月18日投稿予定です。
それでは、また。
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