三 シバン王子
シーア軍務長官は今回の亜種スライムは一筋縄ではいかないと推測している。
これまでに、酸性の液を飛ばすアシッドスライム、攻撃を加えると一定の確率で爆発するボムスライムなど、近付くと危険なスライムには、これまでに遠隔攻撃で対処してきた歴史がある。
だが、それは先々代までの話で、最近一〇〇年程はゴブリンやコボルトなど素早く耐久力の高いモンスターの襲来が多かった。魔法は当たらなければ意味がなく、当たらなかった場合、術者に隙が生まれる。また、魔力を持って生まれてくる人間はおよそ三割で、魔導士は絶対数が少ない。その点、戦士や武闘家は数が多いため多人数で対処することも可能だったので、ゴブリンやコボルトには魔法よりも近接攻撃の方が有効とされた。以上の理由から、次第に魔導士や魔導武器に費やされる資金は減っていたのだ。
「わかりました。では、ひとまずは通常の編成で対処いたします」
シーア軍務長官は説得を諦めることにした。
「うむ。そうしてくれ」
そう言うとポンジャ十世はワインを飲み干した。すると、第二王妃が背後から絡みつき、接吻を始めた。
シーア軍務長官が部屋を後にすると、部屋からは王と王妃たちの笑い声が聞こえた。
気が重くなりながら王座の間まで戻って来ると、シーア軍務長官は溜息を吐いた。
すると、第四王子のシバンが自室へ戻る所に遭遇した。シバンはシーア国務長官に気が付くと声を掛けた。
「おや、シーアさん。浮かない顔をされてますが、どうされました?」
「ああ……。いえ、なんでもありません。シバン王子はいつもの訓練ですか?」
シーア軍務長官はシバン王子の父である国王に対する不満を漏らすわけにもいかず、話を逸らした。
「ええ。僕はいつも通り、武道の訓練をしていました。少し休憩してから魔法の訓練もするつもりです」
シバンは精悍で整った顔で爽やかな笑みをたたえながら答えた。
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